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世界銀行が示したタイの成長5産業|その市場で、御社の商品を買う企業は何社ありますか?

「タイは成長市場」と聞いて進出しても、売れるとは限らない

「タイ市場はこれから伸びるらしい」 「食品産業が有望らしい」 「EV関連への投資が増えているらしい」
こういう話を聞いて、社内で「うちもタイ、行ってみようか」となる。ここまでは、本当によくある流れです。
では、自社の商品を、タイの誰に売るのでしょうか。
この問いに即答できないまま、話だけが先に進んでしまう。実は、これもよくある流れです。
2026年9月、世界銀行がタイの今後の成長について、注目度の高いレポートを公表しました。今回はこのレポートを入口にして、「成長産業」の情報を営業にどう変えるかを、現地の目線でお話しします。

2037年の高所得国入りには「5.4%」が必要

世界銀行のレポート「Building Thailand’s Future Today」(2026年9月3日公開)によると、タイが2037年までに高所得国入りするには、今後10年間、実質一人当たりGDPを年平均5.4%で成長させる必要があります。
一方、同行の「Thailand Cities of the Future」によると、2021〜2024年の実績は年約2.2%。必要なペースの半分にも届いていません。
つまりこのレポートは、「タイは自然に伸びますよ」という話ではありません。「今のままでは届かないから、伸ばす産業に絞って投資しよう」という話です。

世界銀行が挙げた「タイの成長5産業」

世界銀行は、生産性・投資・質の高い雇用創出につながる可能性が高い分野として、次の5つを挙げています。
日本企業から見た接点を右列にまとめました。
成長分野世界銀行の論点日本企業から見た接点


ただし、ここで立ち止まってください。
「タイで伸びる産業」と「自社の商品が売れる市場」は、同じではありません。
※マクロ経済や成長産業の全体像は、こちらで整理しています。

成長産業の「周辺」に、日本企業のB2B市場がある

工場が伸びれば、完成品メーカーだけが儲かるわけではない

先端製造業が伸びる。そう聞くと、EVや電子機器の完成品メーカーばかりに目が行きます。でも、工場が増えれば、その周りに買い手が生まれます。

  • 工場設備・部品
  • 検査機器
  • 自動化・省エネ
  • ソフトウェア
  • 教育・人材育成

「タイに自社商品を売る」のではなく、「タイのメーカーに、日本企業の商品・設備・サービスを売る」という見方です。
ただし、買い手候補が見つかっても、そこから先で止まることがあります。成長市場を見つけるより先に、具体的な営業先と営業方法を決めなければ、動きようがないからです。
実際に、こんな相談がありました。食材や惣菜を作っている日系の食品メーカーさんで「タイのローカル市場にも売りたい」というご希望です。
ところが動きが止まっていました。
ローカルに日系のおかずを売るため、タイ人の営業スタッフに「営業してください」と指示は出していた。
でも、日本人の担当者はタイ語ができず、「どの企業を狙い、誰に、どのように提案するか」まで具体的に指示できていませんでした。
結果、タイ人営業がやっていたのは、工場にチラシを送ることだけでした。
日本の味を作れることと、タイのローカルに売れることは、別の仕事です。成長産業の数字をどれだけ眺めても、この「別の仕事」の部分は見えてきません。

農業・食品も「日本食品を輸出する市場」だけではない

タイは農業・食品の輸出国です。だから「日本の食品をタイで売る」ばかり考えがちですが、食品産業が伸びるなら、次の分野にも市場が生まれます。

  • 食品加工
  • 設備
  • 包装
  • 物流
  • 品質管理
  • 原材料

食品・農業の商機は、日本からタイへの一方通行でもありません。タイ側から「日本市場に農産物を売りたい」と相談をいただくこともあります。

それでも「成長産業だから売れる」と判断してはいけない

市場規模より先に「誰が買うか」を見る

市場規模のグラフだけでは、具体的な営業先は決まりません。最低限、次の4つが分からないと、販路開拓は動き出しません。

  • 誰が買っているのか(買い手)
  • 競合は誰か(競合)
  • 現地での価格はいくらか(現地価格)
  • 誰が決めるのか(決裁者)

化粧品メーカーさんから、こんなご相談をいただいたことがあります。「いい商品だから、タイで売りたい」。ただ、市場調査はしておらず、ターゲットも決まっていませんでした。
商品が良いことは、売れる理由の一つにすぎません。誰に売るのかが決まらなければ、価格も、売り方も、決められないからです。

「日本製だから選ばれる」は、もう市場調査ではない

「日本産だから高く売れるはず」。この前提は、実は一番危ういところです。タイの企業も、世界中の商品・技術を比べて選んでいます。
この点は、抹茶の事例で詳しく書きました。 

タイの抹茶市場で「日本産なら高く売れる」は本当か?現地2ブランドから見えた現実|WITHTHAI タイ大手外食グループCRGが抹茶ブランド「I’M MATCHA」を95バーツから展開。一方、タイの小規模ブランドは40〜5 withthai.jp

「タイの食品市場」から「買う企業」まで落とす

この記事でいちばんお伝えしたいのは、ここです。

タイ → 成長産業 → 市場 → 企業 → 担当部署 → 決裁者

ここまで落として、はじめて営業になります。
たとえば、次の2つは、情報としての価値がまったく違います。

  • 「タイの食品産業は成長する」
  • 「自社の設備を購入する可能性があるタイ企業が30社あり、そのうち10社にアプローチできる」

前者は、ニュースです。後者は、営業計画です。
※「30社・10社」は説明用の数字です。

タイ企業を「見つける」だけでも、実際には簡単ではない

では、御社が自力でこれをやろうとしたら、何が起きるか。現地の実務を見てきた立場から、止まりやすい場所を3つ挙げます。

日本語検索だけでは、候補企業が出てこない

日本語で検索して出てくるのは、大手ばかりです。ローカル企業は、ほとんど出てきません。
タイ語できちんと検索して、はじめて候補に上がってくる企業が、実はたくさんあります。そしてその中に有力な販売先になる企業が含まれていることも少なくありません。
大手だけを見て「売れそうな先がない」と判断すると、候補になり得たローカル企業を、最初から落としてしまいます。

会社を見つけても「誰に連絡するか」で止まる

代表メールに送って、返事が来るのを待つだけでは、タイでのB2B営業はなかなか前に進みません。購買なのか、技術なのか、品質管理なのか。商品によって、アプローチすべき部署は違います。そして、最終的に誰が決めるのか。そこまで分からないと、次の一手が打てません。

ヒアリングすると、公開情報とは違う市場が見える

実際にタイ語で企業に話を聞くと、統計やレポートには出てこない話が出てきます。いま何に困っているのか。いまどこから、いくらで買っているのか。日本企業に何を期待し、何を警戒しているのか。
たとえば、公開情報から想像していたよりも、実際は小規模だった、ということがあります。机の上の情報だけで「大きな市場だ」と判断していたら、営業計画そのものがずれていたはずです。
ここまでを、日本から、タイ語なしで、本業の合間にやる。やれる会社も、あるとは思います。でも、御社の担当者さんが、実際にどのくらいの時間をかけられるでしょうか。

最初に調べるのは「タイ市場」ではなく「自社を買う企業」

世界銀行がタイの成長産業として5分野を挙げたことは、日本企業にとっても大切な情報です。
でも、「成長産業だからタイへ進出する」だけでは、営業戦略にはなりません。
本当に調べるべきなのは、その市場の中に、自社の商品・技術を買う可能性のある企業が何社あり、誰に、いくらで、どう売るのか、です。
「タイ市場に可能性があるか調べたい」という段階でも構いません。
WITHTHAIでは、市場規模の調査だけでなく、必要に応じて、販売先候補となるタイ企業の調査、現地企業へのヒアリング、アポイント取得、商談・営業まで対応しています。

市場調査 → タイ企業調査 → 候補企業リスト → ヒアリング → アポイント → 商談・営業支援

「タイ市場が伸びるか」ではなく、「自社の商品を買う企業がタイにいるのか」を調べたい企業様は、ご相談ください。

出典

長谷川舞美|タイ貿易×海外販路×インバウンド戦略支援

タイ在住18年・大手総合商社出身。中小企業のタイ進出と訪日インバウンド支援を行うマーケター。

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