
2026年10月16日〜18日、バンコクのサイアムパラゴンで、日本政府観光局(JNTO)主催の「Visit Japan FIT Fair #18」が開催されました。日本各地の自治体、観光団体、ホテル、鉄道会社がタイ人旅行者に向けてPRする、訪日旅行専門のフェアです。
私は初日と最終日の2日間、会場を歩きました。
結論から言うと、私が見た範囲では、FIT Fairで動いていたのは認知獲得までです。そこから予約までの道は、ほぼ空白でした。
今年のテーマは「日本の地方」
テーマはタイ語で「ญี่ปุ่นเมืองรอง ลองแล้วจะรัก」(日本の地方都市、行ってみればきっと好きになる)。東京・大阪・京都以外の地域を売り込む、地方同士の競争の場です。
東北は「束」で、九州は「スイーツ」で戦っていた


会場で最も目立っていたのは東北でした。九州も華やかでしたが、展示スペースは東北の方が大きく、広域PRに力を入れていました。
東北観光推進機構が2026年4月に公表した資料によると、自治体・DMO・民間事業者が「東北Zone」として共同出展し、単独では出せない訴求力を狙っています。東北を一つの旅行先として印象づけ、複数県の周遊につなげる戦略です。
同機構が公表した昨年(2025年)の東北Zone来場者アンケートでは、次の結果が出ています。
- 約96%が「東北を旅行先として前向きに検討するようになった」
- 約58%が「すでに予約した」「すぐに行きたい」「1年以内に訪問したい」
ただし、これは会場来場者の意向であり、実際の旅行実績ではありません。
九州は「KYUSHU SWEET TRIP」を掲げ、食とスイーツを入口に観光地や鉄道旅行をつなげていました。九州観光推進機構の2025年度タイ市場向け事業資料では、2024年のタイから九州への渡航状況について、前年比85%にとどまったと報告されています。宮崎県の出展では、周遊モデルコースやタイ語パンフレットに加え、SNSフォローキャンペーンやタイ人インフルエンサーの活用も組まれていました。
自治体は、認知から接点の維持までを一連で設計していました。
会場で一番人が集まっていたのは「プレゼント」だった
正直に書きます。人だかりができていたのは、プレゼントのあるブースでした。Instagramをフォローするとシールがもらえる、というタイプです。チラシだけを置いているブースは、ほとんど素通りされていました。
これは「旅行先として選ばれた」のではなく、「プレゼントに反応した」のだと私は見ています。ただ、フォローやチラシで地名が目に入る分、認知の入口にはなります。
私が驚いたのは、その先です。
- フォローさせていたのは、日本語か英語のアカウントばかり
- 私が確認したSNSフォロー施策は、InstagramとFacebookが中心。LINEとTikTokは、恐ろしいほど見かけなかった
- 私が見た範囲では、タイ語のアカウントを案内しているブースは1件もなかった
タイ人が日常的に使う媒体と、地方側が用意している受け皿が、噛み合っていませんでした。
来場者が聞いていたのは、ほぼ同じ質問だった
ブースで来場者が聞いていたのは、ほとんどが同じ2つです。
「日本のどこにあるの?」
「何があるの?」
予約方法を聞いている人は、見かけませんでした。
興味は持った。でも、場所も、何があるかも、まだ分からない。そのまま会場を出た人が、帰宅後にシールのためにフォローしたアカウントを開くと、流れてくるのは日本語か英語の投稿です。
この人が、旅行を決められるでしょうか。
ホテル単独だと、どこで詰まるか
地方の宿が旅行者に選ばれるまでには、4つの段階があります。
| 段階 | 内容 | 会場で見えたこと |
|---|---|---|
| 1. その地域へ行く理由 | 季節の景色、食、文化、イベント | 「何があるの?」が多数 |
| 2. 旅の組み立て | 場所、交通、周辺観光地、周遊ルート | 「日本のどこ?」が多数 |
| 3. その施設を選ぶ理由 | 温泉、客室、食事、体験 | 宿が最も発信しやすい領域 |
| 4. 予約への案内 | 公式サイト、宿泊プラン | 予約方法を聞く人は見かけず |
宿が発信しやすいのは3です。ところが、来場者が止まっていたのは1と2でした。どれだけ客室と料理の写真を磨いても、「それ、日本のどこ?」の手前で止まります。
自治体は東北のように束になって1と2を作れます。一軒の旅館が単独で地域全体の認知を広げるには、限界があります。
周辺観光やアクセスは発信できても、「日本のどこ?」に答え続けるには、タイ語で、タイ人の目線で、継続して回す手が要ります。
自社でやろうとしたら、何が必要か
- タイ人が日常で使う媒体を選ぶ
- タイ語で「日本のどこ?」「何があるの?」に答える
- 旅程と予約までつなぐ
これを、タイ語ができて、タイ人の旅行の決め方を知っている人が、一貫して回す必要があります。社内にその人はいるでしょうか。
FIT Fairで見えたのは認知までです。認知から予約までの間は、各施設が自分で埋めるしかありません。
WITHTHAIについて
私は以前、訪日旅行サービスを展開する企業で、タイ人向けのインバウンドマーケティングを担当し、タイ人KOLの選定・交渉にも携わってきました。
現在は、日本のリゾートホテルのタイ語SNS運用を担当しています。
タイで18年間生活し、現地の言語や消費者の感覚を理解していることに加え、訪日マーケティングの実務経験を生かして、タイ人旅行者に届く情報発信を支援しています。
「日本のどこ?」「何があるの?」に答え、宿泊検討から予約までつなぐ設計と運用まで、タイ語で行います。
タイ人向けのSNS運用やインバウンド集客については、WITHTHAI公式サイトよりご相談ください。
参考資料
- 日本政府観光局(JNTO)「Visit Japan FIT Fair #18」公式サイト
- 東北観光推進機構「第18回ビジット・ジャパンFITフェア 東北Zone出展者募集」(2026年4月15日)
- 九州観光推進機構「2025年度 タイ市場を対象とする九州観光説明会・商談会事業 業務委託仕様書」
- 宮崎県「タイの訪日観光イベント『Visit Japan FIT Fair #18』に出展します」(2026年10月14日)
※会場での観察は筆者による現地視察情報です。

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