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タイ市場調査で私が最初に見ること|「暑い国だから売れる・売れない」で判断しない理由

「タイに10年住んでます」「現地に詳しい人を知っています」——そう言われて、なんとなく安心してしまったことはありませんか。
私は今年、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が実施した「海外市場開拓トライアル(タイ)」で、外部審査員を務めました。
この事業は、日本企業の商品をタイでテストマーケティングする企業を選考するもので、私はタイ市場で検証する価値があるかという視点から審査を担当しました。
今回は、その審査でも私が大切にしている市場調査の考え方をご紹介します。

気候だけを見て、私自身が失敗した話

大手商社のタイ支店で13年、化学品の輸出入や東南アジア営業を担当していました。その中で、いくつかの商材について「暑い国だから」という前提だけで需要を予測し、外した経験があります。

保冷剤:「暑い国だから売れる」は半分しか合っていなかった

タイ・インドネシア・ベトナムの3か国で、保冷剤の販路調査をしたことがあります。当時の仮説はシンプルでした。「暑い国だから、モノを冷やしたいニーズは絶対に大きいはずだ」というものです。

結果は、思っていたのと違いました。この3か国では、安価な氷が保冷剤の代わりとして日常的に使われており、保冷剤そのものの流通は、高級スーパーや病院など一部の販路に限られていました(これは当時の調査時点の話で、コールドチェーンやEC冷蔵配送が発達した今は状況が変わっている可能性があります)。

「暑いから冷やしたい」というニーズ自体は正しいのです。でも、そのニーズを満たす手段としてすでに「氷」という安価な代替品が生活に根付いていて、そこにわざわざお金を払う理由が保冷剤にはなかった、ということです。気候は当たっていたのに、購買行動の理由を見ていなかった。これが最初の失敗でした。

ゴキブリシート:「害虫が多いから売れる」も同じ落とし穴

同じような失敗は、殺虫・防虫関連の商材でも経験しています。「タイはゴキブリが多いから、日本の高性能な駆除グッズは売れるはずだ」という仮説も、そう単純ではありませんでした。この話は別記事で詳しく書いているので、気になる方はそちらもあわせて読んでみてください。

保冷剤もゴキブリシートも、共通しているのは「気候や環境という、目に見えやすい条件だけで需要を判断していた」という点です。現地の人がすでに何を使い、どう問題を解決していて、そこにお金を払う理由があるのかまでは見ていませんでした。

逆に「暑い国だから売れない」も思い込みなことがある

面白いのは、逆のパターンもあるということです。「暑い国だから、この商品は絶対に売れない」という思い込みが外れるケースもあります。

たとえば使い捨てカイロ。日本企業が台湾・タイ・シンガポール・UAEなど、一見カイロが不要に思える暖かい地域に展開し、需要を見出してきた実績があります。暖房設備のない住宅も多く、気温が下がる場面や冷房で冷えた環境では、意外と「すぐ暖を取れる便利さ」に需要があったということです。

「暑い国だから売れる」も「暑い国だから売れない」も、どちらも気候というひとつの軸だけで結論を急いだ思い込みという意味では同じです。

気候は、仮説の入り口でしかない

ここまでの経験から言えるのは、気候や環境は「調査を始めるきっかけ」にはなっても、「結論」にはならないということです。

本当に見るべきなのは、次の4つです。

  • すでにその課題を解決している代替品は何か
  • 誰が、いつ、どんな場面でその商品を使うのか
  • その代替品ではなく、わざわざお金を払う理由が作れるか
  • 実際にどんな流通・販路であれば、その商品にたどり着けるか

「暑いから」「多いから」で思考を止めず、この4つまで分解して初めて、仮説は検証に値するものになります。

相談相手を選ぶとき、在住年数だけで判断していませんか

ここまで読んで、「じゃあ誰に相談すればいいの」と思った方も多いと思います。

タイ進出の相談相手を探すとき、「タイに長く住んでいる人」を基準にする方は多いです。ただ、在住年数はひとつの目安にはなりますが、それだけでは判断材料として不十分です。

見るべきポイントは、たとえばこういうことです。

  • タイ語で一次情報を取得できるか
  • 現地企業や販売店と直接交渉できるか
  • 市場調査から販路開拓まで実務経験があるか
  • 仮説をデータや現場で検証できるか

「住んでいる」と「動ける」は、まったく別の話です。長く住んでいるだけで、すべての地域・所得層・年代・業種の商習慣を理解できるわけではありません。

自社の仮説、検証できていますか

「暑いから」「多いから」で判断が止まっているなら、それは市場調査ではなく感想です。
御社の担当者は、代替品・利用場面・価格帯・流通まで分解して、その仮説を検証できるでしょうか。もし「そこまで手が回らない」「何から手をつけていいか分からない」という状況であれば、それこそが外部の力を借りるべきタイミングです。

WITHTHAIでは、タイ法人・タイ語対応・18年の現地実務経験をもとに、御社の仮説を現地の実情に照らして検証するところから支援しています。気候や印象ではなく、実際の商習慣・代替品・購買理由まで踏み込んだ市場調査をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

長谷川舞美|タイ貿易×海外販路×インバウンド戦略支援

タイ在住18年・大手総合商社出身。中小企業のタイ進出と訪日インバウンド支援を行うマーケター。

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