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「予算100万バーツでテレビ局を呼んでください」会社名も言えない依頼の先にあった、パートナー選びの失敗

これからタイの現地パートナーを探す方も、すでに代理店と契約していて「なんとなく頼りないな」と感じている方も、まずはこの話を聞いてください。
10月のある日、タイの会社経由でこんな問い合わせが来ました。
「テレビ局を呼べる人を探している。予算は100万バーツ。とにかく急いでほしい」
ブランド名は聞いても教えてもらえません。
「日本人なら誰でも知っている有名ブランドです」とだけ言われました。
あまりにふわっとした言い方だったので、半分冗談で「日本の有名チェーンの名前」を挙げて「もしかしてこれですか?」と聞いてみました。
すると「守秘義務があるので言えません」という返事。否定もしない。

正直、納得いきませんでした。そのレベルの大手なら、自社かグループの代理店で完結できるはずです。なんでわざわざ、タイの会社経由で、専門外の私のところまで話が回ってくるのか。
「そんな大手なら自分たちで呼べるんじゃないですか?それにその予算ではテレビ局はまともに動かせませんよ」と聞いたら、また「守秘義務で」とかわされました。

ブランド名も、目的も、はっきりしないまま、テレビ局の話だけがどんどん先に進んでいく。
それでも依頼してきた側は本気でした。

メディアリストは渡しません

やり取りの中で「呼べそうなメディアのリストをください」と言われました。これはお断りしました。

メディアとの関係は、現地で長年かけて作ってきた財産です。目的もわからない相手に、見積もりの段階でリストだけ渡すことはできません。「呼べる社数」としてだけ、20社程度というラインを伝えました。

「KPIは?」と聞かれて、答えられなかった理由

見積もりを出すと、「このプランのKPIは?」と聞かれました。

これには正直に「お答えできません」と言いました。ブランド名も、商品も、何を達成したいPRなのかも、何ひとつ教えてもらえていない状態で、効果指標だけ求められても出しようがないからです。PRの目的が「メディア露出の数」なのか「特定層への認知」なのか「売上への接続」なのかで、設計はまったく変わります。それを伏せたまま数字だけ欲しいというのは、順番が逆です。

そして、音信不通になった

見積もりとやり取りを終えたあと、突然連絡が途絶えました。何の返事もなく、それきりです。

数ヶ月後、あるニュースを見て手が止まりました。タイに大型進出した日系企業の派手なオープニングイベントの記事です。会場も、時期も、当時聞いていた話とぴったり重なっていました。

ああ、やっぱりあの時の勘は当たってたんだ。会社名は最後まで明かされませんでしたが、状況証拠は揃いました。誰もが知っているレベルの有名企業ですら、現地での実行段階になると、こういう回り方をしていたわけです。

正直に言うと、「それだけの規模の会社なんだから、もうちょっとちゃんとした体制組んでよ」と思いました。でも、これは特定の企業が悪いという話ではありません。

本当の問題は、PRじゃなかった

ここまで読むと「PRの発注がうまくいかなかった話」に見えるかもしれません。でも、私が実際に引っかかったのはそこじゃありません。テレビ局を呼ぶノウハウや、メディアとの関係構築は、本来きちんとしたPR会社や代理店が持っているべきものです。それなのに、なぜ専門外の私のところまで話が回ってきたのか。

答えはひとつしかありません。本社が最初に選んだ会社だけでは、この案件を実行できなかったからです。もし現地でテレビ局やメディアと直接つながっている会社が最初から入っていれば、この案件が何社も経由して専門外の私のところまで流れてくることはなかったはずです。

実行力を持っていない会社は、どうするか。下請けに丸投げします。下請けも持っていなければ、さらに下に投げます。これが何段階も続いた末に、ブランド名もKPIも目的も削ぎ落とされた「とにかく急いで」だけが、専門外の私のところに着地したわけです。

つまりこれは、PRの設計ミスではなく、最初のパートナー選定の段階で、現地に実行力があるかどうかを見極められなかったことが原因です。

これからパートナーを探す人へ:選ぶときに見るべき3つのポイント

こういう構造を避けるために、現地パートナーを決める前に確認すべきことがあります。

1. 「直接」関係を持っているか
「メディアに強い」と言う会社は山ほどあります。でも、それが自社の直接の関係なのか、別の会社を経由した又聞きの関係なのかで、実行力はまったく違います。下請けに投げる体質の会社は、緊急時にこそボロが出ます。

2. 目的を先に聞いてくるか
「予算と納期だけ聞いて、すぐ動きます」と言う会社は一見頼もしく見えます。でも、目的もKPIも聞かずに動き出す相手は、的外れな成果物を出してくる可能性が高いです。最初に「何を達成したいんですか」と聞き返してくる相手の方が信用できます。

3. 緊急時に「できないこと」を言えるか
今回の件で言えば、100万バーツでテレビ局を大量に呼ぶのは現実的に無理でした。それを「できません、別の現実的な案を考えましょう」と言える相手か、それとも無理を承知でとりあえず引き受けて、後で破綻する相手か。これは事前にはわかりにくいですが、見積もり段階のやり取りである程度見えてきます。

すでにパートナーがいる人へ:その不安、当たってるかもしれません

「うちは大手企業じゃないから関係ない」と思われるかもしれません。でも、この構造が起きる原因は規模ではなく、パートナーを選ぶ段階での見極めの甘さです。むしろ人数が少ない中小企業ほど、「知り合いの紹介だから」「日本語が通じるから」という理由だけでパートナーを決めてしまい、後から実行力のなさに気づくケースをよく見ます。

今のパートナーに対して、こんなモヤモヤを感じたことはありませんか。

「急ぎの依頼を投げたら、妙に時間がかかる」「目的を聞かずに、とりあえず動き出す」「できないことを『できない』と言わず、後になって違う結果が出てくる」。これ、今回の話と同じサインです。御社が動かそうとしているプロジェクト、現地のパートナーが本当に「直接」その仕事をやれる相手かどうか、契約した時点で検証しましたか?

誰もが知ってる規模の会社でも、現地パートナーの見極めで躓きます。会社の大きさは、現地での実行力を保証してくれません。だからこそ、現地で何ができて何ができないかをはっきり言える、しっかりしたパートナーを最初に選ぶことが大事です。新しい現地パートナーを探して、また同じ回り道をする前に、選択肢としてWITHTHAIも検討してみてください。タイ法人を持っているので、契約・貿易・現地での実務を、又聞きの又聞きを挟まず直接巻き取ることができます。発注してから「話が違った」となる前に、一度ご相談ください。

長谷川舞美|タイ貿易×海外販路×インバウンド戦略支援

タイ在住18年・大手総合商社出身。中小企業のタイ進出と訪日インバウンド支援を行うマーケター。

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