戦略を『実務』で完結させる。タイ現地での営業フォロー・物流・SNS運用をワンストップで。

なぜ日系企業のタイ広告は刺さらないのか?balann事例に学ぶ「翻訳ではない」SNS運用術

最近、バンコクのSNSをスクロールしていると、ある変化に気づきます。
広告のビジュアルが、明らかにうるさくなった。
顔のアップが異常に大きい。テキストがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。
背景はパステルやビビッドカラー。日本的な「余白の美学」とは真逆の、画面を圧迫するような情報量。
私の世代(Gen Y)からすると、最初は違和感しかありませんでした。
「なんで顔をここまで大きくするの?」「もう少し引いたら?」って。
でも、これはただの好みの問題ではありません。
これが今のタイのGen Zに「刺さる」フォーマットなんです。

タイの世代別好み

タイのGen Z(現在10代〜20代前半)は、TikTokとInstagram Reelsで育った世代。0.数秒でスクロールをやめさせるには「一瞬で目を引く何か」が必要で、その答えが「顔デカ・文字デカ・色鮮やか」なんです。日本の広告が「見る人に考えさせる余地を残す」のに対して、タイのGen Z向け広告は「考える前に反応させる」設計になっています。

では、タイのGen Yはどうか。

彼女たちは違います。上品で落ち着いた画像を好む。余白があって、丁寧な説明があって、信頼感がある。「この商品、本当に良さそう」と納得してから購入する世代です。

同じタイ人でも、見ている「画面の言語」がまったく違う。これが今のタイ市場のリアルです。

同じ商品・同じ価格で、コピーがこれだけ違う

では、実際にタイのブランドはどうやってこの「世代の壁」を超えているのか。

Instagramで見つけた、あるタイのビューティーブランドの投稿が非常に参考になったので紹介します。

ブランド名は「balann(バラン)」。リンパケア用の美顔ブラシを販売しています。1セット690バーツ(通常980バーツ)。同じ商品・同じ価格なのに、Gen YとGen Zへの訴求コピーをまったく別の言語で書いています。

Gen Y向けのコピー(要約): リンパを流して顔のむくみを解消。肌を健康的に。継続使用で顔のラインがシャープになり、目元の疲れも和らぐ。肌への刺激が少なく、アジア人の顔に合わせて設計された繊細な毛質。「Gentle longevity care」。

Gen Z向けのコピー(要約): 探しても見つからない、似ているものも存在しない🌟 使ったら2026年のトップ確定💛 かわいい🧖‍♀️ 送料無料!今すぐコメントで!🍒

同じブラシです。同じ値段です。でも、左右でまったく別の「言語」で書かれています。

Gen Yには「機能・成分・継続使用の効果」をロジカルに説明する。Gen Zには「ノリ・共感・希少性・トレンド感」を絵文字とともにリズムで伝える。

どちらが優れているというわけではありません。ターゲットに合わせてトーン&マナーを完全に切り替えている、ということが重要なんです。

これをひとつの投稿の中でやっているところが、このブランドの上手いところ。見た人が「あ、私はこっち側だ」と自然に自分をあてはめられる設計になっています。

飲食店でも同じことが起きている

これは美容業界だけの話ではありません。

バンコクの飲食シーンを見ていると、Gen ZとGen Yで「行く店の基準」がまったく違います。

Gen Zが選ぶのは、カジュアルでポップな空間。「Vibeが良い」「写真が撮れる」「なんかおしゃれ」で十分。食事の質よりも「その場の空気感」が先に来ます。TikTokで見た店に行列を作ることも珍しくない。

Gen Yが選ぶのは、上品で落ち着いた店。でも、それだけではありません。「誰かに話せる店」であることが重要なんです。「先週、〇〇に行ってきたんだけど」と言えるかどうか。SNSに上げたときに「え、どこそれ?」と言ってもらえるかどうか。いわゆる「マウントが取れる店」(笑)。

同じ「おしゃれな店」でも、Gen Zは「Vibeと自分らしさ」、Gen Yは「ステータスと信頼感」を求めています。

これはそのまま、商品やサービスの広告にも置き換えられます。あなたの会社のタイ向け広告、「どちらの世代に向けて作っているか」を意識して作られていますか?「タイ人向け」という一括りで、どちらにも届いていない広告になっていませんか?

なぜ日系企業のタイ向け広告は刺さらないのか

ここで、多くの日系企業が陥っているパターンを正直に言います。

「翻訳は合っているのに意味が通じていない。」

日本本社で作ったブランドガイドラインとビジュアル、それをタイ語に翻訳して現地で配信する。
文法的には正しい。ブランドの世界観も守っている。でも、タイ人には「刺さらない」。

なぜか。

日本のブランドコミュニケーションは「丁寧・統一・整合性」を大切にします。それは日本市場では正しい。でも、タイのSNSの世界では、その「丁寧さ」が「おもしろくない」「親しみにくい」に変換されることがあります。

特にGen Zに向けては、スラング・絵文字・崩した文体が「信頼の証」だったりします。「ちゃんとしすぎた投稿」は、むしろ「距離感のある企業」に見えてしまうんです。

そして「現地スタッフに任せているから大丈夫」という企業も要注意です。現地スタッフがGen Zであれば、Gen Y向けのコンテンツは感覚でわかりません。逆も然り。「タイ人が作ればタイ人に届く」は、必ずしも正しくない。

ターゲットの世代を理解した上で、ビジネスの文脈に落とし込む。そのための判断軸が、現地の発信者側にないと機能しないんです。

半年前の知識はもう古い

タイのSNSトレンドのサイクルは、日本より明らかに速いです。

半年前に流行っていたTikTokのフォーマットが、今では「古い感じ」になっていることもザラにある。新しいスラングが生まれ、使われなくなるまでのスパンが非常に短い。

今バンコクのSNSで見かける「顔デカ広告」も、半年後にはまた違うフォーマットに変わっているかもしれません。

「以前タイに駐在していたから大丈夫」「本社の担当者がタイ市場を勉強した」では追いつかない速さで、タイのSNSは動いています。

私が毎日現地でSNSを見ているのは、仕事だからというだけでなく、「現在地を把握し続けないと支援できない」からです。現地の空気感は、現地にいないとわからない。それが現実です。

あなたの会社のタイ向け広告、誰の視点で動かしていますか?

タイ市場で広告やSNSを動かすとき、大切なのは「誰の視点で作るか」です。

日本人の感覚、現地の世代ごとの感覚、そしてビジネスとしての論理性。この三つを繋げて判断できる人間が、タイ向けのマーケティングには必要です。

「現地スタッフに任せる」でも「日本本社が管理する」でもなく、両方をつなぐ視点。

バンコクに18年いて、毎日現地のSNSを見て、クライアントの広告や投稿を見続けているからこそ、その橋渡しができると思っています。

タイ向けの広告やSNS運用にお困りの方、まずは一度ご相談ください。自社でやり続けてみるのか、現地の視点を取り入れるのか、それを判断するだけでも、話してみる価値はあると思います。

長谷川舞美|タイ貿易×海外販路×インバウンド戦略支援

タイ在住18年・大手総合商社出身。中小企業のタイ進出と訪日インバウンド支援を行うマーケター。

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

ShopeeとLazadaの違いを徹底解説|日本企業がタイで売るならどっち?

【2026年最新】タイのペット市場規模は1000億バーツへ。成長の背景と日本企業の参入戦略

Flash Express撤退と緑茶王の失敗に学ぶ「成功体験」を捨てる勇気

8,000社閉鎖と大手撤退の衝撃。2026年のタイ市場で「選ばれる」ための生き残り戦略

「安価な労働力」のタイは死んだ。100億バーツのテスラ関連投資が突きつける、日本企業サバイバルの条件。

日本企業が知らない「2025年のタイのデジタル戦略」徹底解説

PAGE TOP