FDA申請で日本で使っているラベルをタイ語に訳して、貼る。タイに食品を出すとき、いちばん最初に思いつくのは、このやり方ではないでしょうか。
ラベルは、貼って終わりの付属物ではなく、商品登録に影響しうるものです。そして2026年10月、そのラベルのルールがまた変わろうとしています。
先に結論|保健省告示474号は、FDAが公表済み。官報掲載は確認できていません
FDAが10月16日に公表した内容
タイFDA食品局は2026年10月16日、保健省告示(第474号)B.E.2569を発表しました。正式名称は「容器包装入り食品の表示(第2号)」です。2024年に施行された第450号を改正するものです。
ただし、FDAの発表タイトルには「官報掲載手続き中」と明記されています。執筆時点で、官報に掲載された正式な本文は、私は確認できていません。
施行日と経過措置|条文案には規定があります
10月16日のFDA発表の本文には、施行日も経過措置も書かれていません。一方、FDAが公開している第450号との比較表には、第474号の条文案(ร่าง=案)が載っていて、そこに規定があります。ただし、あくまで官報掲載前の「案」です。
2026年10月26日時点で、第474号の正式な施行日は確認できていません。FDAが公開した告示案では、官報掲載日の翌日から施行すると規定されています。
| 条 | 条文案の規定 |
|---|---|
| 第1条(施行日) | 官報掲載日の翌日から施行 |
| 第9条(経過措置) | 第450号に適合し、第474号による改正部分には適合していないラベルは、施行日から最長2年間、一定の条件で販売を続けられる |
| 第10条(例外) | 食品添加物、乳児用調製乳、サプリメントなど、第3条で定める9分類は、施行日から新しい規定に適合する必要がある |
気をつけたいのは、第9条です。「2年間は旧ラベルのままでいい」という意味ではありません。条文案では、次の3つがそろった場合の話です。
- 第450号に適合していること
- 第474号の施行日から2年以内であること
- 第10条の例外(9分類)に当たらないこと
第450号に適合していないラベルは、この猶予の対象になりません。そして、すべての食品に2年の猶予があるわけでもありません。正式な日付と条文は、官報掲載後の告示本文で、改めて確認してください。
すでに効いている第450号との関係
ここで見落としやすいのが、第450号は、すでに施行済みだという点です。
- 第450号は2024年7月18日に官報掲載、翌19日に施行されました(JETRO)。
- それ以前に食品登録番号を取得した食品の旧ラベルは、2026年7月18日まで使えました(JETRO)。この猶予は、もう終わっています。
- 第450号では、アレルゲンに貝類・軟体類(イカなど)が加わりました(JETRO)。
つまり、「第474号が始まったら考えよう」ではなく、第450号の段階で、すでに確認が必要だったわけです。しかも、第474号の経過措置の条文案は、第450号に適合していることを条件にしています。第450号の時点で不適合のラベルは、新しい猶予の対象にもなりません。日本のラベルをタイ語に直訳しただけの商品は、そこで引っかかっている可能性があります。
第474号の主な変更点(FDA発表で確認できたもの)
FDAの発表本文をタイ語で読み、日本語にしたものです。以下では、日本からタイへ食品を輸出する場合に関係する主な変更点に絞って整理します(タイから輸出する食品の製造国表示など、一部の改正点は省いています)。なお、施行日や経過措置は、FDA公開の告示案に基づく情報であり、正式な告示本文での確認が必要です。
| 項目 | FDA発表の内容 |
|---|---|
| ゴマ | アレルゲンに、ゴマ・ゴマ製品を追加(1品目) |
| 木の実 | アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーカン、ピスタチオ、クルミ、ブラジルナッツ、マカダミア、松の実の9種を明示 |
| 亜硫酸塩・乳糖 | アレルゲンのリストから削除。代わりに、乳糖を含む食品、亜硫酸塩がSO₂換算で10mg/kg以上残る食品に対する警告を追加 |
| アレルゲン表示の免除 | Codexのリスク評価に基づき、残留タンパク質が基準内の場合は免除 |
| 食品添加物 | 複数の機能を持つ添加物は、他の機能も表示可。「溶媒・キャリア」と「包装ガス」は表示を免除 |
| デジタルラベル | 任意で導入。乳児用食品、サプリメントなど5分類は対象外。物理ラベルには7項目(名称、FDA番号、内容量、原材料、アレルゲン、警告、期限)を引き続き表示 |
| タイ語の文字サイズ | サイズの規定は、タイ語表示のみが対象と明確化 |
| 表示義務を免除されない食品 | 食品添加物、乳児用調製乳、サプリメントなど9分類は、販売方法にかかわらず表示義務あり |
気をつけてほしいのは、「亜硫酸塩・乳糖」の扱いです。「表示が厳しくなる」ではなく、アレルゲンの枠から外れて、別の警告の枠に移るという変更が予定されています。従来の表示をそのまま使うのではなく、新しい警告表示の要件に照らして確認する必要があります。
なお、アレルゲンの追加数は、意見公募の段階と違います。2025年12月の意見公募では、ゴマ、セロリ、マスタード、ルピナスの4品目が追加候補でした(JETRO)。しかし、2026年10月16日のFDA発表では、追加されるアレルゲンはゴマ・ゴマ製品の1品目とされています。意見公募段階の情報をもとにした資料もあるので、日付を見て読み分けてください。
「タイ語に翻訳するだけ」で足りない理由
FDAは、中身が同じでもデザインが違うことを理由に別の商品として扱いました。ラベルは「翻訳して貼る文字情報」にとどまらず、商品の登録に影響することがある。このとき、そう実感しました。
ここから先は、翻訳だけでは終わらない理由を整理します。
表示の問題は、翻訳ではなく原材料の問題です
日本の原材料表示は、日本の法令の区分で書かれています。タイのアレルゲンの区分は、それとは別物です。たとえば、第450号で貝類・軟体類が入りました。第474号でゴマが入り、乳糖と亜硫酸塩が外れます。
日本のラベルの「一部に〜を含む」を訳しても、タイのアレルゲン区分に照らして正しいとは限りません。必要なのは翻訳ではなく、原材料を、タイの区分で洗い直す作業です。
食品添加物の名称と機能表示
添加物は、名称の書き方も、機能(用途)の表示のルールも、国によって違います。第474号では、複数の機能を持つ添加物の表示と、一部の機能の免除が整理されます。日本の「甘味料(〜)」「酸化防止剤(〜)」の書き方が、そのまま対応するかは、別に確認が要ります。
責任を負うのは輸入者です
JETROによると、ラベル表示の基本的な責任は輸入者にあります。販売時点でラベルが不適切または未貼付なら、輸入者に加えて、販売者も責任を問われます。
誰が、どの時点で、何を確認するのか。ここは、デザインを確定する前に決めておきたい点です。
混同しやすい2つの手続き|商品登録と表示は別物です
カテゴリーによって、必要な手続きが変わります
食品は、カテゴリーによって、商品ごとにFDAの登録(食品シリアル番号の取得)が必要なものと、そうでないものがあります。すべての食品に同じ手続きが必要なわけではありません。制度の全体像は、タイFDA(食品医薬品局)とは?で整理しています。また、輸入者側の許可や保管場所の話は、タイで輸入会社を設立するならに書きました。
登録が通っていても、表示は別に問われます
ここが、いちばん混同されるところです。
- 商品登録:その商品を、タイで扱えるようにする手続き
- 表示規制:その商品のラベルに、何を、どう書くかのルール
この2つは、別の問題です。登録できたから、ラベルも大丈夫とは限りません。逆に、ラベルが規制に適合していても、その商品に必要なFDA登録や輸入者側の許可が不要になるわけではありません。
そして、冒頭の私の経験のとおり、ラベルのデザインを変えると、登録の扱いにも影響が出ることがあります。デザインを確定する前に、FDAにどう扱われるかを確認しておく。この一件から、私はそう考えています。
輸出前に確認したいこと
「うちの商品は大丈夫か」を考えるときの、確認項目です。
| 確認すること | なぜ確認するか |
|---|---|
| 商品が、登録が必要なカテゴリーか | 手続きの有無で、準備の順番が変わる |
| 原材料を、タイのアレルゲン区分で洗い直したか | ゴマ、貝類・軟体類、乳糖、亜硫酸塩など、日本の区分とずれる |
| 添加物の名称と機能表示は、タイの書き方か | 名称・用途の書き方が国で違う |
| タイ語ラベルに、名称・FDA番号・内容量・原材料・アレルゲン・警告・期限が揃っているか | デジタルラベルを使う場合も、この7項目は物理ラベルに残る |
| ラベルのデザインを変える場合、登録の扱いがどうなるか | デザインの違いで別の商品として扱われた例がある(私の商社時代の経験) |
| 旧ラベルの在庫や印刷済みの包材があるか | 第450号の猶予は2026年7月18日で終了済み。第474号の猶予は、条文案では第450号に適合していることが条件 |
| 誰が、いつ、ラベルを最終確認するか(メーカー/輸入者) | 責任は輸入者にあるが、販売者も問われる |
施行日が出てから動いて間に合うのか、出る前に確認しておくべきなのかは、商品と在庫の状況で変わります。ここは、一般論では答えが出ません。
自社で全部確認しようとしたら
ここまで読んで、「うちでもできそう」と思われたかもしれません。実際にやるとなると、次のような作業が並びます。
- タイ語の原文で、第450号と第474号(施行されたら)を読む。翻訳版や解説記事は、案の段階と最終版が混ざっていることがあります。
- 原材料を一つずつ、タイのアレルゲン区分と照らす。
- 添加物の名称と機能表示を、タイの書き方に直す。
- 登録が必要か、変更でどう扱われるかを、FDAに確認する。
- デザイン確定の前に、輸入者と責任の分担を決める。
しかも、第474号は、官報掲載が確認できておらず、正式な施行日も確定していません。ルールが動いている最中に、タイ語の原文を追いながら、自社の商品に当てはめていく。これを、本業の合間に、輸出の準備と並行してやることになります。
WITHTHAIにご相談いただけること
WITHTHAIは、タイ在住18年、大手商社のタイ支店で13年、食品を含む輸出入・営業の実務をしてきた私が運営しています。ご相談いただけるのは、次のようなことです。
- 食品カテゴリーの確認と、必要なFDA申請の整理
- 日本メーカーから取得する原材料・添加物などの必要情報の整理
- タイ現地パートナーと連携した、タイ語ラベルの作成と、表示規制への適合確認
- FDAへの確認、追加書類・修正依頼への対応
「うちの商品は、今回の改正に対応できているのか」「輸出前に、何を確認すればいいのか」。そこから、一緒に整理できます。商品の内容によって必要な手続きは変わるので、個別にご案内します。
詳しくは、タイ法人設立・FDA/各種許認可取得支援をご覧ください。「これ、うちだけで確認しきれるかな」と少しでも引っかかったら、ラベルを印刷してしまう前に、お問い合わせください。

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