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バンコクから日本人美容師が消える? タイ外国人事業法「規制緩和」の裏で起きていること

バンコクには日本人スタッフが在籍する美容室があります。
日本語が通じて、日本人の感覚でカットしてくれる。
在タイ日本人なら一度はお世話になったことがあるのではないでしょうか。

でも、その美容師さんが「技術指導」や「技術提供」という名目でタイに来ていることをご存知ですか?

外国人が美容師として直接施術することは、タイの法律で禁じられた職種に指定されています。
だから「施術」ではなく「指導」という建前でビザを取る。現地に18年いると、このグレーゾーンの実態はよく見えます。

そしてその「建前」が、今まさに通じなくなろうとしています。

2026年5月、「規制緩和」のニュースが出た

2026年5月12日、アヌティン首相が議長を務めるタイ閣議が、外国人事業法(FBA)のリスト3から特定のサービス業を外国人事業ライセンス(FBL)の取得免除とする草案を原則承認しました。

免除対象になる業種はこういったものです。

  • グループ内の管理・人事・IT・資金統括サービス
  • 証券法・先物取引法に基づく特定の仲介・アドバイザリー・ファンドマネジメント
  • 自社インフラを持たない非ネットワーク系の通信サービス
  • 石油採掘サービス
  • 金融機器・自動販売機設置のためのスペース賃貸

「外資に追い風」「タイが外国企業に門戸を開く」という論調で報じられましたが、少し落ち着いて見てみましょう。

これは「自由化」ではありません

今回の改正の本質は二重規制の解消です。免除対象の業種はすでに中央銀行(BOT)、証券取引委員会(SEC)、国家放送通信委員会(NBTC)など専門機関が別途監督しています。「同じ業種に商務省からもライセンスを取らせるのは非効率だから省こう」という、規制の合理化に過ぎません。

また、当初リストに入っていたソフトウェア開発は直前で除外が見送りになりました。国内のデジタル産業を保護すべきという声が強かったためです。テック系の外資進出を考えている企業は注意が必要です。

さらにこの草案は、まだ発効していません。法制委員会(Council of State)の審査を経て、官報(Royal Gazette)に掲載されて初めて法的効力を持ちます。早くても2026年中旬から後半の見通しです。

規制緩和と同時進行で摘発が過去最大規模になっている

ここからが本題です。

政府が「まっとうな二重規制」を緩める一方で、違法な手段でFBAをくぐり抜けてきた企業への取り締まりが、過去に例を見ないレベルで強化されています。

2026年5月13日、アヌティン首相自らがコ・パンガン島(パンガン島)に乗り込み、300人の捜査官がノミニー疑い企業への一斉捜索を実施しました。商務省事業開発局(DBD)と特別捜査局(DSI)が共同で、コ・サムイ・コ・パンガン両島の11,426社を分析してリスク分類。不動産・ホテル・ヴィラ経営を中心に、実態は外国人が運営しながらタイ人名義で登記している企業が標的になっています。

摘発はプーケット、クラビー、パタヤ、ホアヒンへ順次拡大する方針が明言されており、ノミニー疑い法人はすでに50,000社以上が把握、うち6,551社については詳細調査が進行中です。

1人のタイ人が87社の株主として登録されていた事例も発覚し、DSIに送致されています。

2026年の規制強化、2段階で入口を塞いだ

施行時期対象となる手続き義務化された内容
2026年1月1日新規法人の登記(外国人が取締役・署名権者となる場合)タイ人株主の資金出所証明(通帳・銀行証明)の提出が必須化
2026年4月1日既存法人の役員変更(外国人を代表取締役・署名権者に変更する場合)既存法人でも同様に資金出所証明が義務化。「タイ人名義で設立→後から外国人に実権移譲」の手口が封鎖

取り締まりは摘発だけではありません。法人登記の入口を、今年に入って2段階で締め付けています。

2026年1月1日施行: 外国人が取締役・署名権者となる新規法人の登記時に、タイ人株主の資金出所証明(通帳・銀行証明)が必須に。

2026年4月1日施行: 既存法人でも外国人を代表取締役・署名権者に変更する際、同様の資金証明が義務化。「タイ人100%で会社を作り、後から外国人に実権を移す」という常套手段が完全に封じられました。

この2段階の締め付けにより、高リスクのノミニー会社の新規登記はすでに約75%減少しています。

「技術指導という名目」は今後も通じるのか

話を冒頭の美容師に戻しましょう。

「施術ではなく技術指導」「雇用ではなく業務委託」——この種の建前は、現地では昔から広く使われてきました。美容師に限らず、飲食店のシェフ、フィットネストレーナー、語学講師など、さまざまな職種で似たような構造があります。

政府が今回力を入れているのはホテル・ヴィラ経営という規模の大きなケースですが、当局はビッグデータを使って組織的に疑い企業を洗い出しています。「みんなやっているから大丈夫」「今まで問題なかったから大丈夫」が通じた時代は、静かに終わりを迎えています。

FBA違反の罰則は最大100万バーツの罰金と最長3年の懲役。ノミニーに使われたタイ人株主も処罰対象です。

「自分の会社は関係ない」と思っていませんか?

進出時の会社設立を「安く・早く」と急いで進めた結果、法人構造の実態をよく確認しないまま何年も運営を続けている——そういうケースを、現地で何度も見てきました。

「うちはちゃんとやっている」と思っていても、過去の設立経緯や現在の取締役構成がグレーなままになっていることがあります。今回の2段階規制強化を機に、自社の法人構造を一度点検しておくことを強くお勧めします。

タイでの法人構造・ノミニーリスクの点検は「WITHTHAI」へ

「自社の設立経緯がグレーかもしれない」「今回の規制強化に対応できているか不安」という企業様は、お気軽にWITHTHAIへご相談ください。

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長谷川舞美|タイ貿易×海外販路×インバウンド戦略支援

タイ在住18年・大手総合商社出身。中小企業のタイ進出と訪日インバウンド支援を行うマーケター。

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