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タイFDAを取る前に考えたい。2026年関税改正後も越境EC直送は成立するのか

タイで化粧品を販売しようとすると、最初に「FDAを取得しなければ」と考える企業は少なくありません。もちろん、化粧品を正規に輸入・販売するうえで、FDA手続きは重要です。

ただし、販売先をLazadaやShopeeに設定し、日本からタイの購入者へ商品を直接発送するのであれば、FDA登録より前に確認すべきことがあります。

関税・VAT・国際送料・通関手数料・プラットフォーム手数料まで含めても、タイの消費者が購入できる価格に収まるのか。誰が輸入者となり、関税や通関費用を負担するのか。ここが決まっていなければ、FDA番号を取得しても、販売事業としては成立しません。

2026年1月からは、これまで1,500バーツ以下の少額貨物に認められていた関税免除が事実上なくなりました。この記事では、制度変更の内容だけでなく、タイ向け化粧品販売でFDA登録前に確認すべき採算と販売方法について、実務の視点から整理します。

2026年1月、1,500バーツ以下の関税免除が廃止されました

2024年7月、タイではCIF価格1,500バーツ以下の少額貨物についてもVAT7%の課税が始まりました。一部の対象品目には物品税も課されますが、この時点では関税そのものは免除されていました。この措置は2025年末まで延長されていました。

しかし2026年1月1日から、課税価格1,500バーツ以下の貨物に適用されていた関税免除が廃止されました。これにより、少額貨物もHSコードと原産地に応じた関税率で課税判定されるようになりました。タイ関税局は2025年12月、この廃止を関税通達第219号(2568年)として発表しています。

すべての商品に同じ税率がかかるわけではなく、もともとの関税率が0%の品目もあります。また、JTEPA、AJCEPなどの原産地規則を満たせば、関税が軽減・免除される可能性もあります。

ただし、日本から発送したというだけで日本原産品として扱われるわけではありません。利用する協定の原産地規則を満たしているか、商品ごとに確認する必要があります。なお、JTEPAやAJCEPなどでは、200ドル以下の輸入品について原産地証明書の提出が免除される場合がありますが、原産性を示す資料が不要になるわけではありません。

つまり、「1,500バーツ以下なら関税を考えなくてよい」という、少額貨物の直送モデルを支えていた前提の一つがなくなったということです。

「関税分を上乗せすればいい」では終わらない理由

関税とVATだけを見て値付けを直すと、たいてい足りません。積み上がるコストはこれだけあります。

  • VAT7%
  • 関税(HSコードによって税率が変わります)
  • 国際送料
  • クーリエの通関・立替手数料
  • プラットフォーム手数料
  • 広告・キャンペーン費用
  • 受取拒否・返品にかかるコスト

例えば、商品代と国際送料などを含むCIF価格が1,200バーツ、関税率が仮に10%だった場合、関税は120バーツです。VATは関税を加えた1,320バーツを基準に計算されるため、約92バーツになります。関税とVATだけで約212バーツです。

2025年まで同じ貨物にかかっていたVATは84バーツだったため、この例では2026年の制度変更によって税負担が約128バーツ増えます。さらにクーリエの通関・立替手数料、プラットフォーム手数料、広告費などが加わります。

こうしたコストの全体像はタイの物流事情とも関わってきますが、これらを積み上げて、ようやく「利益が残る売価」が見えてきます。しかし、利益が残る売価と、タイの消費者が実際に払ってくれる価格は別物です。同じ検索画面に安い類似商品や個人セラーの商品が並ぶLazada・Shopeeでは、価格を上げるほど比較時に不利になりやすくなります。

日本企業の競合は、正規輸入品だけではありません

タイのEC市場では、正規輸入代理店だけでなく、日本で商品を仕入れて販売する個人セラーや小規模事業者も競合になります。販売形態によっては、正規輸入事業者とは異なるコスト構造で出品されているため、正式な輸入手続きを行う企業が価格だけで競争するのは簡単ではありません。

なお、販売目的の商品を個人使用の荷物として無申告で持ち込むことは、適法な輸入方法ではありません。しかし、消費者がLazadaやShopeeの検索画面で比較するのは、輸入方法ではなく、価格、レビュー、配送日数です。「日本の公式商品」という訴求だけで、大きな価格差を埋めるのは難しいのが実情です。

FDAを取れば売れる、というのも別の思い込みです

FDA番号を取得することと、タイで売れることは、まったく別の問題です。FDAは需要を作ってくれませんし、利益も保証してくれません。FDAを取得してから販売方法を考えるのは、順番が逆なんです。

FDA登録そのものは、専門の登録代行業者に依頼できます(登録の実務についてはタイで化粧品をFDA登録するには?で解説しています)。でもその前に、その商品がタイで売れるのか、どの販売方法なら利益が残るのかを判断しておく必要があります。

FDA登録しても、その商品を独占販売できるわけではありません

もう一つ日本企業が見落としやすいのが、タイFDAの化粧品通知番号を取得しても、その商品を自社だけがLazadaやShopeeで販売できるようになるわけではないという点です。実際にLazada・Shopeeで同じブランド名を検索すると、性質の違う売り手が同じ検索結果に並びます。

1.Watsonsなどの大手ドラッグストアチェーン

ブランド側が複数の卸し先と正規に取引していれば、自社のLazMallストアとは別に、こうした大手ドラッグストアチェーンのオンラインストアにも同じ商品が並びます。これは違法でも何でもなく、ブランド側が複数チャネルに卸せば当然起きることです。

2.LazMall認証を受けた卸売・代理店ストア

ブランド公式ストアではありませんが、正規のルートで仕入れ、数年単位の運営実績と数百件規模の販売実績を積んでいるケースがあります。

3.日本商品の輸入を専門とするECストア

「日本から仕入れて売る」こと自体を長年の実績として運営しており、高いリピート率を保っている店舗も見られます。これは、これから日本からの直送モデルを始めようとしている企業にとって、すでに同じ土俵で先行しているプレーヤーがいるという厳しい現実です。

4.個人・小規模の並行輸入セラー

タイ語ラベルのない商品をそのまま販売しているセラーです。手持ち撮影の商品写真や、パッケージが日本語表示のままであることなどから見分けがつく場合があります。化粧品通知番号は販売店ごとではなく商品に紐づく番号のため、こうしたセラーが既存の番号を商品情報に入力して出品できてしまうことも実際にあります。

つまり、日本企業が費用を負担してFDA登録をしても、大手ドラッグストアチェーン、正規の代理店ストア、輸入専業の同業者、そして個人セラーまで、性質の違う売り手が同じ検索画面に並ぶ可能性があります。消費者が見るのは、その裏にある販路の違いではなく、価格、レビュー、配送日数です。

FDA登録はタイで商品を販売するために必要な手続きですが、販売チャネルや価格競争から自社を守る仕組みではありません。登録前に、どの販路にどう卸すのか、並行販売への対応、タイでの商標、正規販売店としての見せ方まで含めて考える必要があります。

Lazada・Shopeeに出品できることと、正規に輸入できることは別です

LazadaやShopeeの商品情報に化粧品通知番号を入力して出品できることと、その商品をタイへ正規に輸入できることは別問題です。

タイFDAが案内している販売目的の化粧品輸入手続きでは、化粧品の製品通知に加えて、輸入ごとのLPI(License per Invoice)取得、タイ税関への輸入申告、FDAチェックポイントでの確認が必要とされています。

したがって、日本からタイの購入者へ一件ずつ直送する場合も、「Lazada・Shopeeに出品できるか」だけでは判断できません。各貨物で誰が輸入者になるのか、誰の名義でLPIと輸入申告を行うのか、関税・VATを誰が負担するのかを整理する必要があります。

FDA登録済みの商品番号を使ってECに出品できたからといって、日本からタイの購入者へ自由に直送できる仕組みが完成するわけではありません。ECへの出品と、販売目的の輸入手続きは分けて考える必要があります。

タイ向け化粧品、参入方法は主に3つあります

日本から購入者へ直接発送する
高単価で軽量な商品や、小規模な市場検証では候補になります。ただし、化粧品を販売目的で輸入する以上、少額だから許認可や輸入手続きが不要になるわけではありません。FDA登録名義、実際の輸入者、LPI、税関申告をどのように運用するかに加え、関税・VATを販売者側で負担するのか、受取人に支払ってもらうのかも事前に決める必要があります。

タイで一括輸入して国内から発送する
継続的に売っていくならこちらです。1個あたりの物流費は下げやすくなりますが、輸入者・在庫・倉庫の整備が必要になります。

タイの代理店・輸入販売会社へ卸す
自社の実務負担は大きく減りますが、利益率と販売のコントロールは下がります。そして、代理店が見つかっただけでは売れません。

FDA登録の前に、確認しておくべきこと

  • タイで同じカテゴリーの商品は、いくらで売られているか(正規品・非正規品の両方)
  • 関税・VAT・物流費を含めた着地原価はいくらになるか
  • その原価で利益が残る売価は、実際に消費者が払ってくれる価格か
  • どの顧客が、なぜ日本製を選ぶのか
  • 直送・一括輸入・代理店販売のどれが、この商品に合っているか
  • 最初に投入するSKUと、見送るSKU

これを詰めないまま先にFDAへ費用をかけると、「登録は終わったけれど、売り方が決まっていない」という状態になります。

WITHTHAIが調べるのは「登録できるか」ではなく「事業として成立するか」

2026年の関税改正によって、日本からの直送がすべて成立しなくなったわけではありません。ただし、これまでよりも商品価格、関税、VAT、物流費、通関方法を含めた採算確認の重要性は高まっています。

WITHTHAIでは、FDA登録の代行ではなく、その商品がタイ市場で売れる可能性があるのか、正規品と非正規品を含めた競合構造はどうなっているのか、関税・VAT・物流費を含めた採算が成り立つのか、どの販売方法なら利益を残せるのかを調査し、参入チャネルと販売価格を含めた市場参入戦略を設計しています。

FDA登録に費用をかける前に、タイ事業として成立する条件を整理したい企業は、WITHTHAIへご相談ください。

長谷川舞美|タイ貿易×海外販路×インバウンド戦略支援

タイ在住18年・大手総合商社出身。中小企業のタイ進出と訪日インバウンド支援を行うマーケター。

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