バンコクのデパートやレストランで最近ペット同伴OKの店が目に見えて増えています。テラス席だけでなく、館内に犬を連れて入れる施設も珍しくなくなりました。
これは単なるサービスの変化ではありません。タイ人にとってペットが「家族」になったという、消費構造そのものの変化です。
タイが「子供よりペット(犬・猫)を選ぶ国」へ変化した社会的背景
タイの合計特殊出生率は2023年時点で1.0を下回りました。少子化・晩婚化・単身世帯の増加、バンコクのコンドミニアム文化——これらが重なり、ペットが「子ども代わり」の存在になっています。
カセサート大学獣医学部の2024年調査によると、国内のペット数は約508万頭で前年比8%増。TGMの調査ではペットオーナーの58%が自分のペットを「家族」と定義しています。
犬が依然トップ(47%)ですが、猫が急追しています(42%)。Mintelの調査によると、2021年から2024年の間に猫の飼育数は年平均28%増と、犬の19%を大幅に上回るペースで伸びています。バンコクのコンドミニアム暮らしに猫が向いていることが背景にあり、この傾向は今後も続くと見られています。
重要なのは、これが一時的なブームではないという点です。少子化と都市化は構造的なトレンドであり、ペット市場の拡大は今後も続きます。
2026年には1,000億バーツ規模へ。急成長するタイのペットケア市場データ
2024年10月、タイ商工会議所主催のPet Fair Southeast Asia 2025の開幕に合わせて、タイ政府がペット産業の最新データを発表しました。Nation Thailandの報道によると、タイのペット市場規模は2025年に920億バーツに達し、前年比13%増。2026年には1,000億バーツを超える見込みです。
ttb analyticsのデータでは、2019年から2024年の年平均成長率は17.5%。東南アジア全体のペットケア市場の約半分をタイ一国が占めており、GlobalPETSはタイを「東南アジア最大のペットケア市場」と位置づけています。
さらに驚くべきは輸出規模です。Nation Thailandの別報道によれば、タイは2024年にペットフード輸出27億ドルを記録し、ドイツに次ぐ世界第2位。タイ商工会議所は5年以内に輸出50億ドルを目標に掲げており、世界トップの座を狙っています。
日本市場と比べてみてください
ここで日本のペット市場と比較すると、この成長率の意味がよりはっきりします。
矢野経済研究所によると、日本のペット関連市場は2025年度に約1兆9,000億円の見込みで、タイの約4倍の規模があります。ただし成長率は年率1〜2%。ペットフード協会の調査では、犬・猫の飼育頭数は合計約1,566万頭で減少傾向にあります。
一方タイは、飼育頭数が年8%増で伸び続け、市場成長率は17.5%。規模はまだ日本より小さいですが、方向性がまったく違います。
| 項目 | 🇯🇵 日本 | 🇹🇭 タイ |
|---|---|---|
| 市場規模 | 約1兆9,000億円(2025年予測) | 約4,300億円・1,000億バーツ超(2026年予測) |
| 年間成長率 | 年率1〜2%(成熟・横ばい) | 年率17.5%(2019〜2024年平均) |
| 飼育頭数 | 約1,566万頭(犬682万・猫885万) | 約508万頭 |
| 飼育頭数の方向性 | 減少傾向 | 増加中(前年比8%増) |
| 人気ペット | 猫が犬を上回る(猫885万 vs 犬682万) | 犬47% vs 猫42%、猫が年28%増で急追 |
| 市場のトレンド | 1頭あたり支出増・プレミアム化が牽引 | 「ペット人化」加速・健康志向需要が急拡大 |
| ペットフード輸出 | 主に輸入側 | 27億ドル・世界第2位(2024年) |
国内市場が成熟・縮小に向かっている今、タイは日本のペット関連メーカーにとって数少ない高成長市場の一つです。すでに動き出している企業は結果を出し始めています。
日本製品はすでに勝っている——問題は「その先」です
タイのペット市場で、日本製品への信頼は高い。特に日本メーカーが得意とするカテゴリ——プレミアムフード、機能性フード、療法食、ペット用トイレシート、オムツ——では、品質と清潔感への評価が定着しています。
腎臓ケアや消化サポートといった療法食、グレインフリーやオーガニック素材を使ったプレミアムフード、年齢・犬種別に設計された機能性フード。日本国内では当たり前になったこれらの商品がタイではまだ十分に供給されていません。Mintelの調査でも、タイのペットオーナーが健康志向・長寿志向の商品を強く求めていることが示されており、日本メーカーの得意領域とそのまま重なります。
ユニ・チャームの2024年第3四半期決算資料には、タイについて「プレミアム商品展開で高成長を実現、フード・トイレタリーで商品ラインアップ拡充」と明記されています。さらに2025年第1四半期の資料では「東南アジアでペットケアに対する先行投資を積極的に展開し大幅な伸長を実現」と報告されており、早くから動いた企業はすでに結果を出しています。
ただし、「日本製だから売れる」という時代はとっくに終わっています。
タイのペットオーナーは今、品質だけでなく「この商品は自分のペットへの愛情を表現できるか」という基準で選んでいます。バンコクではペットフレンドリーな飲食店やデパートが増え、ペットと一緒に過ごす時間・場所・体験全体にお金を使うようになりました。消費の文脈が変わっているのです。
タイのペット市場に入るとき、何が壁になるか
現地で見ていると、日本企業がこの市場で詰まる理由は大体同じです。
販路の問題
タイのペット市場は、ペット専門店・獣医クリニック・大型スーパー・オンラインプラットフォームが複雑に絡み合っています。どのチャネルを押さえるかでリーチできる客層がまったく変わります。プレミアムフードや療法食を届けたいなら、獣医クリニックとの連携が不可欠ですが、そのルートを自社で開拓するのは容易ではありません。「とりあえず代理店に任せた」では、プレミアム層には届きません。
現地パートナーの問題
FDA登録、輸入手続き、販売代理店の選定——これらをゼロから自社でやろうとすると時間とコストが想定の何倍にもなります。信頼できる現地パートナーをどう見つけるかが、参入の成否を分けます。
コミュニケーションの問題
タイのペットオーナーはSNS、特にInstagramとTikTokでペット関連コンテンツを大量に消費しています。「機能・成分・価格」を訴求する日本式の商品説明は「うちの子に使いたい」という感情に訴える現地コンテンツに負けます。
WITHTHAIにできること
タイ現地18年、タイ法人保有——この基盤があるからこそ、動けることがあります。
販路開拓と現地パートナー探しは直接サポートします。
「何から始めればいいかわからない」という段階から一緒に整理します。
タイのペット市場に関心のある方、まずはご相談ください。

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