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今、ホテルが「タイ人観光客」を狙うべき理由 ― Z世代時代のインバウンド戦略とSNSの現実 ―

中国市場の回復を待つべきか、それとも次の一手を打つべきか。多くのホテル・観光事業者が判断に迷う中、今、確実に成果につながりやすい市場として注目されているのが「タイ人観光客」です。Trip.com Groupの最新データでも、日本・中国・タイが2026年の主要観光先として挙げられ、主役はGen Z・ミレニアル世代へと完全に移行しています。彼らは検索ではなくSNSで旅先やホテルを選び、TikTokやInstagramが意思決定の起点になります。では、日本のホテルはこの変化に対応できているのでしょうか。本記事では、タイ人観光客集客の現実と今見直すべきSNS戦略を整理します。

目次

なぜ今「タイ人観光客」が狙い目なのか

訪日インバウンドを考える際、「中国市場が戻るまで様子見」という判断をしている自治体や事業者は少なくありません。しかし現場感覚としては、その待ちの姿勢自体が機会損失になりつつあります。今すでに動いており、かつ今から取り組んでも成果につながりやすい市場が、タイ人観光客です。タイは親日度が高く、個人旅行が主流で、情報収集から予約までを自分たちで行う層が中心のため、正しい発信をすれば「選ばれる側」になりやすい特徴があります。

中国回復待ちはリスクが高い理由

インバウンド市場において、長らく「爆買い」の代名詞だった中国市場。しかし、近年の経済状況の変化や団体旅行の減少、さらには外交関係の影響など、不透明な要素が多すぎるのが現状です。多くのホテルや自治体が「いつか戻ってくるだろう」と中国市場の完全復活を待っていますが、特定の国に依存しすぎる経営は極めてリスクが高いと言わざるを得ません。

私はタイに18年在住し、商社での海外営業を通じてアジア各国の経済の浮き沈みを見てきましたが、今のタイ市場には当時の日本が持っていたような「熱気」と「日本への強い信頼」があります。リスクヘッジの観点からも、親日度が高く、経済成長が続くタイ市場へのシフトは急務です。

データで見る:日本・タイは2026年も主要観光先

Trip.comが発表した最新の予測データによれば、2026年にかけてのアジア旅行市場において、日本、中国、タイは不動のトップ3であり続けます。特筆すべきは、タイ人にとって日本は「最も行きたい国」として常に1位、2位を争う存在であることです。

2024年から2025年にかけては、タイ国内の「中所得層」の拡大により、年に複数回日本を訪れるリピーターが激増しています。もはや日本旅行は特別なイベントではなく、日常の延長線上にある「自分へのご褒美」へと変化しているのです。

「増えている」ではなく「成果が出やすい」市場

イ市場が魅力的なのは、単に分母(観光客数)が増えているからだけではありません。日本企業にとって「圧倒的に成果が出やすい」からです。その理由は、タイ人の「徹底した日本好き」にあります。

日本の食、文化、サービスに対する信頼がデフォルトで備わっているため、他国のように「なぜ日本に来るべきか」というゼロからの説得が必要ありません。適切な情報を適切なタイミングで、タイ人が好む形で届けることができれば、驚くほどスムーズに予約へとつながります。

こちらにタイ人の海外旅行トレンドについて詳細を書いています。リピーター率78.6%とデータが出ています。

主役はGen Z・ミレニアル世代に完全に移行した

タイ人観光客集客を考える上で、最も重要な変化が「旅行の主役の世代交代」です。Trip.com Groupの予測によると、2026年にはミレニアル世代が世界の旅行予約の約半数を占め、Gen Zも急速に存在感を高めるとされています。これは単なる年齢層の変化ではなく、旅の選び方・情報収集の仕方が根本から変わっていることを意味します。

団体旅行から個人・家族旅行へ

かつてのタイ人観光客といえば、大型バスで移動する団体ツアーが主流でした。しかし、現在のメイン層は20代から40代の「Z世代・ミレニアル世代」です。彼らはスマートフォンを使いこなし、自分たちで航空券やホテルを予約するFIT(個人旅行)スタイルを好みます。

この世代は、ガイドブックに載っているような場所よりも「自分たちだけが知っている特別な体験」を重視します。そのため、これまでの「大手エージェントへの営業」だけでは、彼らの予約リストに食い込むことはできません。

観光地ではなく「体験・雰囲気・ストーリー」

今のタイ人、特に若年層がホテル選びで重視するのは、部屋のスペックだけではありません。「そこに行くとどんな体験ができるのか」「どんな写真が撮れるのか」という「雰囲気(タイ語でバンヤーカート)」と「ストーリー」です。

例えば、単に「富士山が見える宿」という紹介ではなく、「朝起きてバルコニーでコーヒーを飲みながら、この景色を独り占めできる贅沢な時間」という体験を提示できるかどうかが重要です。彼らは機能性よりも、情緒的な価値に強く惹かれます。

ホテル選びの決定権は「SNS」にある

> 驚くべきことに、タイ人の若年層にとって、Google検索の結果よりもSNSの投稿の方が信頼性は上です。彼らは、ホテルの公式サイトにあるプロが撮影した綺麗な写真よりも、自分と同じ一般ユーザーやインフルエンサーが投稿した「リアルな動画」を見て宿泊を決めます。

つまり、SNSで「見つけてもらう」ための仕掛けがないホテルは、彼らにとって存在しないのも同然なのです。

タイ人の世代別マーケティングガイドに解説しています。

タイ人観光客はどうやってホテルを探しているのか

タイ人観光客集客を成功させるためには、日本側の常識を一度手放す必要があります。Gen Z・ミレニアル世代は、公式サイトや検索エンジンからホテル探しを始めるとは限りません。情報との最初の接点は、ほとんどがSNSです。この動線を理解しないまま発信しても、タイ人観光客の選択肢には入りません。私自身、タイ人からTiktokやIGの動画を送られてきて、日本のここに行きたいと連絡がきます。

Google検索はしない?Z世代のリアルな動線

日本のビジネスマンが旅行を計画する際、まずはGoogleで「京都 ホテル おすすめ」と検索するのが一般的でしょう。しかし、タイのZ世代は違います。彼らの検索窓は「TikTok」や「Instagram」です。

ハッシュタグやキーワード入力で動画を検索し、直感的に「ここ、いいな」と思ったものを保存。そこからさらに詳細を調べるために、ようやくGoogleやOTA(オンライン旅行代理店)へと移動します。最初から文字情報を追うのではなく、視覚情報から入るのが彼らのリアルな動線です。

「流れてきた動画」で行き先が決まる

目的地を明確に決めてから探すのではなく、暇つぶしにSNSを見ている時に「流れてきた素敵な動画」を見て、「次の休みはここに行こう」と決めるケースが非常に多いのもタイ人の特徴です。

これをマーケティング用語では「潜在層へのアプローチ」と言いますが、タイ市場においては動画広告やショート動画の活用が、そのままダイレクトに予約のきっかけを作り出します。

予約前に必ず入る“相談フェーズ”とは

タイ人との取引を18年間経験してきた私が最も強調したいのが、この「相談フェーズ」です。タイ人は、たとえOTAにすべての情報が載っていたとしても、不明点があれば「直接聞きたい」という欲求が非常に強い国民性を持っています。

「駅から本当に歩けますか?」「近くにコンビニはありますか?」といった些細な質問をFacebookのメッセンジャーやLINEを通じて行いたいのです。ここで迅速かつ親切な返信が返ってくるかどうかが、予約確定の最後の決め手となります。

タイ市場向けSNS、やるべき順番と役割

タイ人観光客集客では、「どのSNSを使うか」以上に「役割をどう分けるか」が重要です。日本と同じ感覚で全媒体を横並びに運用しても成果は出ません。タイ市場では、情報との最初の接点から予約直前まで、SNSごとに明確な役割があります。

X(旧Twitter)が不要な理由

タイではXはニュースやエンタメ用途が中心で旅行やホテル探しの主要導線ではありません。情報が流れやすく保存・共有にも向かないため、タイ人観光客集客を目的とする場合、優先度は低いと言えます。限られたリソースを分散させない判断も重要です。

Instagram:世界観と憧れを作る

Instagramは、ホテルの「ブランドイメージ」を作るために不可欠です。タイ人は「写真映え」を何よりも重視します。ホテルのインテリア、盛り付けが綺麗な朝食、窓から見える景色など、視覚的に「素敵!」と思わせるストック情報を蓄積しておく場所として活用しましょう。

Facebook:家族・グループでの検討用

意外に思われるかもしれませんが、タイではFacebookが今でも最強のインフラです。特に30代以上のミレニアル世代や、家族旅行を計画する層はFacebookをメインに使います。詳細なプラン内容や、過去の宿泊客の口コミ(コメント欄)をチェックする場所として機能しています。

TikTok:Z世代の入口(必須)

2025年現在、最も注力すべきはTikTokです。認知の入口として、これほど爆発力のある媒体はありません。洗練された動画よりも、スマホで撮った「リアルな裏側」や「スタッフの顔が見える動画」が好まれます。まずはTikTokで認知を取り、他のSNSへ誘導するのが現代の黄金ルートです。

LINE:予約直前の最後の一押し

前述した「相談フェーズ」を支えるのがLINE公式アカウントです。タイ人の90%以上が利用しており、ビジネスでのチャット利用も一般的です。SNSで興味を持ったユーザーをLINEへ誘導し、そこで質問に答えたり、直接予約のリンクを送ったりすることで、離脱を防ぎ着実に成約へと導きます。

こちらの記事でタイのデジタルマーケティングについて解説しています。

Z世代向けにTikTokが「必須」な理由

タイ人観光客集客を考えるうえで、Z世代へのアプローチは避けて通れません。その中心にあるのがTikTokです。これは単なる流行のSNSではなく、Z世代にとっては旅先やホテルを探すための重要な情報源になっています。日本側がTikTokを「若者向けの娯楽」と捉えている限り、タイ人観光客との接点は生まれません。

TikTokはSNSではなく「検索エンジン」

今のタイ人にとって、TikTokはもはやダンス動画を見るだけのアプリではありません。立派な「検索エンジン」です。「Japan Trip」「Hotel in Osaka」などのキーワードで検索され、表示された動画の内容で旅行の良し悪しが判断されます。ここに動画を投稿しておくことは、SEO対策をするのと同等の価値があります。

プロ動画は不要、スマホ縦動画で十分

「動画を作るなんて、予算も機材もない」と諦める必要はありません。むしろ、タイ人は広告感の強いプロの映像をスキップします。

求められているのは、iPhoneで撮影したそのままの映像です。 ・部屋に入った瞬間のルームツアー ・窓から見えるリアルな天候 ・ホテルの周辺を歩いてみた様子 こうした「加工されていない情報」こそが、高い信頼とエンゲージメント(反応)を生みます。

ホテルが今すぐ撮れる動画ネタ例

・チェックインから部屋までの15秒案内
・朝食バイキングで一番人気のメニュー紹介
・意外と知られていないホテル内の「隠れ映えスポット」
・スタッフが教える、ホテル周辺の美味しいローカル飲食店
・冬の時期なら、窓の外に雪が積もる様子(タイ人は雪に熱狂します)

こうした小さなネタを、タイ語の字幕(翻訳ソフトでも可)を添えて投稿し続けることが、集客への最短距離となります。

日本のホテルがやりがちなNGパターン

タイ人観光客集客がうまくいかないケースには、いくつか共通した失敗パターンがあります。SNSや広告に取り組んでいるにもかかわらず成果が出ない場合、多くは「やり方」ではなく「前提」が日本市場のままになっています。現地の行動や情報の受け取り方を理解しないままでは、発信しても届きません。

日本語のまま発信している

「タイ人は親日だから、日本語や英語でも見てくれるだろう」という考えは今すぐ捨ててください。確かにタイ人は日本が好きですが、情報の受け取りやすさは別問題です。

特にSNSでは、母国語(タイ語)で書かれていない情報はスルーされます。完璧な翻訳でなくても構いません。タイ人が普段使っている単語や言い回しが少し混ざっているだけで、親近感は一気に高まり、リーチ数は数倍に跳ね上がります。

SNSを「更新作業」で終わらせている

定期的に投稿していても、目的や導線を設計していなければ集客にはつながりません。世界観づくり、検討、予約という流れを意識せず、単なる作業としてSNSを更新しているケースは非常に多く見られます。

KOL・広告をやったが成果が出ない理由

「有名なインフルエンサー(KOL)を呼んだのに、予約が増えなかった」という話をよく聞きます。その最大の原因は、受け皿(自社SNSやLINE導線)が整っていないことにあります。

KOLがきっかけで興味を持ったユーザーが、ホテルのアカウントを見に行った時に情報が古かったり、LINEで質問しても返事がなかったりすれば、そこで熱量は冷めてしまいます。広告やKOL施策は、あくまで「火をつける作業」です。燃え続けるための「薪」となる自社発信が伴っていなければ、一時的なバブルで終わってしまいます。

タイ人観光客向け集客で最低限押さえるべきポイント

翻訳ではなく「現地向け設計」

日本語の文章をそのままタイ語に訳すのではなく「タイ人が何を知りたがっているか」から逆算してコンテンツを作る必要があります。

例えば、日本では「静寂な空間」が売りになる場合でも、タイ人には「寂しくて怖い」と映るかもしれません。彼らが好むのは、賑やかで、明るくて、楽しい雰囲気です。ターゲットの文化や感性を理解した上で、見せ方を変える「ローカライズ」の視点が不可欠です。

投稿頻度・内容・温度感

タイのSNS文化は非常にスピードが速いです。週に1回の投稿では、あっという間に忘れ去られてしまいます。理想は毎日、少なくとも週に3回は「動いていること」をアピールしましょう。

また、温度感も重要です。少し「ゆるい」くらいの人間味が感じられる投稿の方がタイ人には刺さります。格式高い敬語よりも、親しみやすい丁寧語(タイ語でいう「カップ/カ」を適切に使った表現)での発信を心がけましょう。

まとめ:今動くホテルと、様子見のホテルの差

市場はもう動いている

タイ人観光客の日本熱は、一過性のブームではなく、完全に定着したマーケットです。そして、彼らの旅行スタイルや情報収集の方法は、日々進化しています。

「もう少し状況を見てから」と足踏みしている間にも、感度の高いホテルや自治体は、着々とタイ語での発信を強め、SNSでのファンを獲得しています。インバウンド集客において「先行者利益」は非常に大きく、一度ファンになったリピーターは、長くあなたの宿を支えてくれるでしょう。

必要なのは大きな予算ではなく「方向修正」

タイ人集客に必要なのは、数百万、数千万の広告費ではありません。
・英語や日本語に頼り切った発信をやめる
・SNSの役割を正しく理解し、TikTokとLINEを組み合わせる
・プロ仕様の綺麗な写真よりもスマホでのリアルな発信を増やす

こうした「ちょっとした方向修正」ができるかどうかが、2025年以降の勝敗を分けます。

まず見直すべきはSNSの設計

まずは自社のSNSが「タイ人から見て魅力的に映っているか」「質問しやすい窓口(LINE)があるか」をチェックしてみてください。

私がタイで培った18年の経験と実際の取引実務で得た知見から言えるのは、タイ人は「自分たちのことを歓迎してくれている」と感じる場所に集まるということです。あなたのホテルの魅力をタイ語という「共通言語」と動画という「直感的なツール」で届けることから始めてみませんか。

もし、「何から手をつければいいかわからない」「タイ語での発信をサポートしてほしい」といったお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。貴社の魅力がタイの人々に正しく伝わるよう、実務レベルで伴走させていただきます。

長谷川舞美|タイ貿易×海外販路×インバウンド戦略支援

タイ在住18年・大手総合商社出身。中小企業のタイ進出と訪日インバウンド支援を行うマーケター。

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