FDAの概要とタイにおける設立背景
タイFDA(Food and Drug Administration)は、タイ保健省に属する行政機関であり、主に「国民の健康と安全」を守るために設置されています。日本でいう厚生労働省の一部機能を担うような位置づけにあり、食品、医薬品、化粧品、医療機器、有害物質など、生活に密接する多様な製品の安全性・品質・表示内容を監督しています。
タイ国内では、輸入製品が適切な品質と安全基準を満たしているかを確認する役割を果たしており、適切な許可・登録が行われていない製品は原則として流通できません。外国からの輸入品については審査が厳しく、正しく登録されていない場合は通関時に足止めされる、または没収されるケースもあります。
1990年代以降、東南アジアへの日本企業の進出が加速する中で、タイFDAは国際基準への適合も進めており、申請制度も電子化や書類の多言語化などの整備が進んできました。ただし、申請にはタイ語での書類作成が基本となるため、現地事情に詳しいパートナーや専門家との連携が欠かせません。
FDAの対象となる製品カテゴリー:何が規制されるのか
食品:定義、分類、主な管理グループ
タイFDAが規制対象とする最も代表的なカテゴリーが「食品」です。食品は以下の3つの管理レベルに分類され、それぞれに求められる登録手続きや許可内容が異なります。
- グループ1:特定管理食品(例:粉ミルク、サプリメントなど)
→ 輸入前にFDAの厳格な審査と登録が必要。 - グループ2:品質規格管理食品(例:調味料、缶詰、冷凍食品など)
→ 基本情報の登録と規格準拠の証明が求められます。 - グループ3:表示管理食品(例:一般加工食品、菓子など)
→ 主にラベル表示の適正確認が中心となります。
輸入する食品がどのグループに分類されるかによって、必要な申請書類や審査期間、ラベル表示の内容も変わりますので、事前の確認が重要です。食品以外にも、以下のような製品はFDAによる許可・登録が義務付けられています。
- 医薬品:成分や効能、用量に関する詳細な資料提出が必要。処方薬・OTCで手続きが異なります。
- 医療機器:製品のリスク分類に応じた登録が必要で、クラスI~IVに分類されます。
- 化粧品:スキンケア・メイクアップ製品なども対象。原料成分の規制が厳しく、申請は事前届出制が基本です。
- 有害物質:洗剤、殺虫剤、化学薬品など。環境法令との連携も必要で、輸入時に特別な通関条件が課されることがあります。
これらの製品カテゴリーはそれぞれ異なる管轄部署が対応しており、必要書類や登録方式も異なります。自社製品がどのカテゴリーに該当するか、管轄部署の確認から始めることがスムーズな申請の第一歩となります。
タイFDA登録のメリットと知っておくべき留意点
スムーズな輸入とビジネス拡大に繋がる登録メリット
タイ市場において商品を安定的に流通させるには「タイFDA登録」が欠かせません。食品や化粧品、医薬品などは、未登録状態では通関ができず、販売はもちろん、展示会やサンプル提供も制限されます。登録を済ませることで、販売機会の拡大だけでなく、輸入時のトラブル防止にもつながり、事業の安定化に大きく貢献します。
- 商品が正式に輸入・流通できる
- タイ国内での信頼性が高まり、小売店や代理店との取引がしやすくなる
- 商品ラベルや成分に関するクレーム・トラブルのリスクを事前に回避できる
申請前に押さえておきたい留意点と注意すべきこと
タイFDAへの登録は、ただ書類を提出するだけでは完了しません。制度理解と綿密な準備が求められます。
以下のポイントを事前に確認しておくことで、申請時の不備や遅延を防ぐことができます。
製品カテゴリーと管轄部署の正確な確認
製品が「食品」なのか「化粧品」「医薬品」なのかによって、申請先の部署や手続きが異なります。分類を誤ると審査が滞り、再提出となるケースもあります。日本とタイでは製品の定義が異なる場合もあるため、現地の基準に基づいて正確に分類しましょう。
法令改定への対応と情報収集の重要性
タイでは年に数回、FDAに関連する法令や基準が見直されることがあります。これにより、申請要件や必要書類が変わることもありますので、定期的な最新情報の確認が不可欠です。現地語での情報発信が中心となるため、タイ語に対応できる体制があると安心です。
GMP証明書など関連書類の事前登録で通関を迅速化
健康食品や医薬品の登録では「製造施設のGMP(適正製造基準)証明書」が求められます。この証明書は製品登録前に別途認可を受ける必要があり、取得に時間を要するケースもあります。書類の整備と同時に、事前に登録可能な書類は早めに対応しておくと、輸入時の通関処理もスムーズになります。
タイFDA登録・届出の具体的なプロセスと手順
申請・登録の全体フローを把握する
タイFDA登録は、単なる申請ではなく「輸入業者登録」「製品登録」「保管施設登録」など複数のステップから成る総合的なプロセスです。
以下の流れをあらかじめ把握しておくことが、スムーズな申請とスケジュール管理の鍵となります。
- オンラインシステムでのアカウント開設
- 輸入業者としての登録(Import Licenseの取得)
- 製品ごとの事前書類準備とカテゴリー分類の確認
- FDAへの製品登録申請(電子申請)
- 必要に応じて保管倉庫や製造元の証明書などの提出
- 登録後の許可証発行および製品流通開始
製品カテゴリによって必要書類や審査プロセスが異なるため、詳細を正確に理解したうえで進めることが重要です。
ステップ1:オンラインシステム開設と輸入事業者登録
まず、タイFDAの公式オンラインシステム「E-submission Portal(e-Submission)」にてアカウントを作成します。アカウント開設には、現地法人の情報や納税番号、代表者情報などが必要です。
その後、輸入業者としてのライセンス登録(Importer License)を行います。これはすべての製品カテゴリーに共通して必要な手続きで登録完了後に輸入者コードが付与されます。ここで登録された業者のみが、製品登録の次ステップに進むことができます。
注意点としてタイ国内で登記された法人でなければ申請はできません。
したがって、日本から直接申請することはできず、タイ法人または現地代理店を通じての申請が必須となります。Shopeeで販売している人はShopee経由で登録します。
ステップ2:製品登録に必要な書類と情報の準備
製品登録においては、詳細な書類と情報の提出が求められます。提出形式は電子ファイルが基本となり、正確かつ整合性のある内容でなければ審査が進みません。
製品関連書類の収集と英語書類の準備
登録時に必要とされる書類は、製品ごとに多少異なりますが、共通して次のような書類が求められます。
- 製品仕様書(成分・用途・製造工程など)
- 製造業者のGMP証明書(食品や医薬品)
- 製造販売許可証(化粧品や医療機器)
- 英文カタログまたはパッケージデザイン案
- 製品ラベル案(原則としてタイ語ラベル)
これらの書類は英語での提出が求められますが、タイ語訳が別途必要なケースもあります。タイFDAはタイ語を基本言語として審査を行うため、翻訳の質や専門用語の正確性にも注意が必要です。
商品に必要なラベル情報の確認と作成
製品のラベルは審査の重要な要素です。ラベルには以下の情報が含まれていなければなりません。
- 商品名(タイ語・英語)
- 原材料名(成分表)
- 内容量・保存方法・製造日・賞味期限
- 製造者・輸入者情報(名称・住所)
- 警告表示や使用上の注意(必要に応じて)
食品・化粧品・医薬品は、誤解を招く表現や根拠のない効能表示は禁止されており、違反があれば審査落ちや行政指導の対象になります。ラベルは必ず事前に確認・修正してから申請しましょう。
ステップ3:カテゴリー別:具体的なFDA申請手続き
製品のカテゴリーに応じて、申請内容や審査方法が異なります。それぞれの手続き概要は以下の通りです。
食品の輸入許可申請とFDA登録(特定管理食品、品質規格管理食品、表示管理食品)
食品は大きく3つのグループに分類されます。
- グループ1(特定管理食品):サプリメント、粉ミルクなど
→ 詳細な登録が必要でGMP証明書や試験データの提出も求められます。 - グループ2(品質規格管理食品):調味料、冷凍食品、缶詰など
→ 規格基準に沿った品質証明が必要です。 - グループ3(表示管理食品):お菓子、インスタント食品など
→ ラベル情報を中心とした簡易的な申請で済みます。
製品がどのグループに該当するかで登録プロセスと所要期間が大きく異なるため、事前の判定が不可欠です。
医薬品、医療機器、化粧品、有害物質の申請
これらのカテゴリーについては、それぞれ独自の基準と管轄部署があります。
- 医薬品:有効成分、用量、効能の詳細登録が必要。審査に最長6ヶ月以上かかることもあります。
- 医療機器:リスクレベル(Class I~IV)に応じて申請内容が変わります。高リスク機器ほど厳格な検査・認証が必要です。
- 化粧品:一般化粧品は簡易届出で済むケースもありますが、医薬部外品に該当する場合は厳しい審査が必要です。
- 有害物質:タイ環境法に基づく別途登録・認可が必要で、関係省庁との連携も求められます。
これらは日本と制度が大きく異なるため、現地ルールに即した正確な申請が求められます。
FDA登録後の手続きと更新について
無事に登録が完了するとFDAより「登録番号(License Number)」が発行されます。この番号はラベルへの記載が義務付けられており、製品流通時の正規品証明にもなります。
ただし、登録は「一度きり」ではありません。
以下のようなケースでは、再申請または更新が必要です。
- 商品の成分・ラベル変更があった場合
- GMP証明書や輸入業者情報が更新された場合
- 登録の有効期限が切れる前(通常3〜5年)
また、登録情報はFDAのデータベースに保管されており、年次監査や抜き打ち検査が実施されることもあります。定期的な見直しと管理体制の構築が輸出ビジネスの継続的な成功に繋がります。
複雑なタイFDA登録は専門家への依頼がおすすめ
FDAライセンス申請代行サービスとは?なぜ専門家が必要なのか
タイFDA登録は一見すると単純な申請作業に思えるかもしれませんが、実際にはタイ語でのやり取りや現地ルールへの対応、製品カテゴリごとの書類要件など、高度な知識と実務経験が必要です。初めてタイ市場に進出される企業様にとって、各手続きを独自に進めることは時間的・人的コストが大きくなりがちです。
このような課題を解決するのが、FDAライセンスの申請代行サービスです。現地の制度や実務に精通したプロが、煩雑なプロセスを一括で対応し、企業の負担を大幅に軽減します。専門家のサポートを受けることで、スムーズかつ正確な登録が実現でき、申請ミスによる再提出や通関の遅延リスクも回避できます。
代行サービスを利用する具体的なメリット
煩雑なプロセスをスムーズにサポート
タイFDAへの登録は、製品ごとの申請方式や分類に応じて手続きが異なるうえ、変更の多い規制にも常に対応しなければなりません。代行サービスでは、各プロセスを適切に管理し、必要書類の取得から翻訳・申請まで一貫して対応します。結果として申請期間を短縮し、ビジネスの立ち上げを加速させることが可能です。
ライセンス及び物流サービスの一元管理
多くの代行サービスでは、FDA登録だけでなく、その後の輸入・物流・通関に関する業務も包括的にサポートしています。これにより、煩雑なプロセスを分割管理する必要がなくなり、情報の行き違いや遅延を防ぐことができます。初回の輸入では物流とライセンス取得の連携が重要です。
日本語・英語での多言語対応
言語の壁は、FDA登録における大きな障害です。代行サービスの多くは、タイ語・日本語・英語の三言語に対応しており、書類作成や申請中のコミュニケーションも円滑に進められます。日本語でのやり取りが可能であれば、社内調整や承認プロセスもスムーズになり、安心して任せられる体制が整います。
まとめ
タイへの輸出・進出を検討する企業にとって「タイFDA登録」は避けて通れない重要なステップです。制度の理解不足や申請ミスによる遅延は、ビジネスチャンスを逃す大きなリスクとなり得ます。だからこそ、正確な情報と現地に精通したパートナーの存在が大切です。
「タイに輸出したいけど、FDA登録が不安」
「まずは何から始めればいい?」
そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。
初回のご相談は無料で承っております。
貴社のタイビジネスの第一歩を全力でサポートいたします。
こちらの記事もおすすめ
コメント