現地18年の経験を活かし、海外展開&インバウンドを最短ルートで。

Flash Express撤退と緑茶王の失敗に学ぶ「成功体験」を捨てる勇気

タイ初のユニコーン企業、Flash Expressのマレーシア撤退という衝撃的なニュースが飛び込んできました。 タイで圧倒的シェアを誇る彼らが、なぜわずか4年で「損切り」を決断したのでしょうか。

「タイで成功したから隣国でも勝てるはず」という思い込みは、海外進出における最大の落とし穴です。

私は日系の大手商社のタイ支店での13年を含め、通算18年にわたり現地の物流や輸出入の実務に携わってきました。 その経験から断言できるのは、他国での成功体験は時として現状を読み誤らせる「毒」になるということです。

本記事では、Flash Expressの事例やタイの緑茶王タン社長(Ichitan)のインドネシアでの失敗とピボット(方向転換)を深掘りします。 タイのビジネスの失敗事例に共通する「成功体験への執着」をどう捨てるべきか。
ASEAN市場のリアルと勝てる土俵を見極めるための勇気を実務家の視点から詳しく解説します。

参考記事:https://www.marketing-interactive.com/flash-express-malaysia-to-shutter-operations
https://www.nationthailand.com/business/tech/40061123

Flash Expressマレーシア撤退の衝撃|タイ発ユニコーンを阻んだ「隣国の壁」

2026年1月サービス終了。なぜタイの成功モデルは通用しなかったのか

タイ初のユニコーン企業として急成長を遂げた物流大手「Flash Express」が、マレーシア市場からの完全撤退を発表しました。現地メディアのMarketing-Interactiveなどの報道によると、同社は2026年1月31日をもってすべてのサービスを恒久的に終了します。集荷オーダーの受け付けは1月15日に締め切られる予定でタイ国内で快進撃を続けてきた同社にとって極めて重い決断となりました。

タイでは「1個からでも無料集荷」という破壊的なビジネスモデルで市場を席巻しましたが、マレーシアでは激しい価格競争と継続的な赤字に苦しみました。タイ在住18年の私の目から見てもタイでの成功体験をそのまま隣国にスライドさせることの難しさを改めて痛感させられるニュースです。

元商社マンが分析する「ラストワンマイル」の構造的敗因

私の13年間を含め、商社の現場で物流実務に携わってきた経験から分析すると、最大の敗因は「ラストワンマイル」における密度の経済と競合環境の読み違えにあります。タイはバンコク一極集中の構造ですが、マレーシアは半島部とボルネオ島に分かれる地理的制約があり、拠点展開や配送網の維持コストがタイ以上に嵩みます。

マレーシア市場にはすでにJ&T ExpressやNinja Van、政府系のPos Lajuといった強力なライバルがひしめいており、後発のFlash Expressがタイ流の低価格戦略を仕掛けても、先行者のシェアを奪うだけの付加価値を提示しきれませんでした。商習慣やインフラの成熟度が異なる国では、過去の勝ちパターンが通用しないどころか、足かせになるリスクがあるのです。

「成功体験」という名の毒薬|ビジネスを愛しすぎると盲目になる

タン社長の哲学「自分のビジネスを愛しすぎるな」の真意

タイの「緑茶王」として知られるIchitanのタン社長は「自分のビジネスを愛しすぎるな」という驚くべき哲学を持っています。ビジネスを愛しすぎると客観的な判断ができなくなり、変えるべきタイミングや引き際が見えなくなるからです。彼はかつて好調だった書店ビジネスでさえ「この先は伸びない」と判断するや否や、即座に次のステージへ進みました。彼にとって事業とは目的地へ自分を運ぶための「車」であり、車そのものに執着して目的地を見失うことはありません。この冷徹とも言える判断力こそが数々の事業を成功に導いてきたのです。

参考動画:https://www.instagram.com/reel/DPTe3xtjWqR/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=NTc4MTIwNjQ2YQ==

思考停止の罠。「ベトナムで売れたからタイでも」が通用しない理由

多くの経営者が陥るのが、「他国での成功体験」という罠です。例えば「ベトナムで大ヒットしたからタイでも売れるはずだ」と戦略をそのまま移植しようとするケースをよく目にします。しかし、東南アジア諸国はそれぞれ法規制、宗教、消費者の嗜好が全く異なります。タイで13年貿易実務に携わってきた私の経験上、隣国での成功を盲信して市場調査を怠る「思考停止」こそが、タイビジネスの失敗事例の典型です。Flash Expressのマレーシア撤退のニュースも成功体験への執着が判断を狂わせるリスクを私たちに警告しています。戦略のコピペは未知の市場では通用しないのです。

緑茶王タン社長の教訓|インドネシアでの「大失敗」と起死回生の一手

味・価格・文化の三連敗。現地で自社の緑茶を「吐き出した」あの日

タイの成功体験を他国へ持ち込む難しさを象徴するのが、Ichitanのタン社長が経験したインドネシアでの挫折です。タン社長は自信を持ってタイ流の緑茶を展開しましたが、現地の味覚や価格帯、文化の壁に阻まれ、「売れば売るほど赤字」という悲惨な状況に陥りました。視察に訪れたタン社長自ら、現地の緑茶を飲んで「腐っている!」と吐き出したエピソードは有名です。タン社長のインドネシアの緑茶失敗の背景には、タイの常識を疑わなかったという盲点がありました。私もタイの仕様を他国に強引に適用して苦戦するケースを数多く見てきましたが、この「自国の成功体験への執着」こそがタイ ビジネス 失敗事例の典型と言えます。

緑茶を捨てて「タイミルクティー」へ。勝てる土俵を見極めるピボット術

しかし、タン社長の真価はここからのピボット(方向転換)にありました。彼は「緑茶」という過去の栄光を捨て、現地で圧倒的な引き合いがあった「タイミルクティー」に全資源を投入したのです。自社の強みである「本物のタイブランド」と現地の「プレミアムなタイの味」への需要が交わる一点を冷徹に見極めた結果、市場での地位を逆転させました。相手に合わせすぎるのでもなく、自分を押し付けるのでもない。東南アジア ビジネス 戦略 違いを深く理解し、勝てる土俵を再定義する柔軟性こそ、今のFlash Expressや海外展開を目指す日本の中小企業に最も求められている資質ではないでしょうか。

参考動画:https://youtu.be/NmpQxcYxKQw?si=d_BFy6zw9b8EMX62

私が「タイ専門」を貫く理由|国を跨げば戦略は180度変わる

ASEAN一括り戦略のリスク。タイ駐在13年で見えた「解像度」の重要性

海外展開を語る際、「ASEAN進出」と一括りにされがちですが、私はあえて「タイ専門」という立場を貫いています。日系商社でタイ支店に13年、輸出入の最前線で痛感したのは、東南アジアのビジネス戦略の違いの大きさです。今回のFlash Expressのマレーシア撤退が象徴するようにタイでの圧倒的な成功モデルであっても、一歩国を跨げば通用しないのが現実です。

タイの成功体験が他国に通用しない最大の理由は、市場の「解像度」不足にあります。例えば物流のラストワンマイル一つとっても、タイとマレーシアではインフラの成熟度も競合の資本力も全く異なります。この微差を見極められなければ、どんなユニコーン企業でも失敗に追い込まれます。だからこそ、私は中途半端に範囲を広げず、タイという一国に特化して専門知識と実務経験を磨き続けているのです。

日本企業が陥りやすい「丁寧すぎて撤退が遅れる」という致命傷

Flash Expressの決断で注目すべきは、2021年の参入からわずか4年強で撤退を決めたスピード感です。対して日本企業は丁寧で誠実な反面「一度始めたからには」という責任感や過去の成功体験が邪魔をし、損切りのタイミングを逃しがちです。赤字が続くタイビジネスの失敗事例の多くは、この「引き際の遅さ」が致命傷となっています。

タン社長のインドネシアでの失敗のように緑茶からタイミルクティーへピボット(方向転換)して生き残る道もあれば、Flashのように市場自体を去る決断も必要です。タイ市場のスピード感の中では、石橋を叩きすぎる「丁寧さ」よりも現場のリアルに即した冷徹な決断力こそが最終的に企業を守る盾となります。

まとめ|賞味期限切れの地図を捨て、タイ市場で勝つための「確かな一歩」を

Flash Expressのマレーシア撤退、そしてタン社長のインドネシアでの苦い教訓。これらの事例が教えてくれるのは、隣国での成功体験が時として「思考の足かせ」になるという厳しい現実です。ASEAN市場を一括りにせず、タイならタイの、マレーシアならマレーシアの「独自の需要とルール」をゼロベースで見極めることこそがタイビジネスの失敗事例を回避する唯一の道です。

私はタイ在住18年、商社の最前線で13年間にわたり輸出入実務に携わってきました。その経験から言えるのは、現地のリアルな手触りを知らずに「他国と同じ戦略」をスライドさせることの危うさです。「自社の強みはタイでどう評価されるのか?」「現地企業と対等に渡り合うにはどうすべきか?」といった実務上の不安は、現地の言語と商習慣に精通したパートナーがいて初めて解消されます。

弊社では、中小企業の皆さまが成功体験の執着という名の罠に陥ることなく、タイ市場で確かな販路を切り拓けるよう、輸出入のスキーム構築から現地での販促支援までトータルでサポートしております。タイ進出への不安を解消し、確実な一歩を踏み出したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。貴社の強みをタイの需要と結びつける、最適な「戦略の地図」を共に描きましょう。

長谷川舞美|タイ貿易×海外販路×インバウンド戦略支援

タイ在住18年・大手総合商社出身。中小企業のタイ進出と訪日インバウンド支援を行うマーケター。

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