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ユズ専門ブランドに学ぶ|中小企業が海外輸出で成功するためのモデルケース

海外輸出を検討する中小企業にとって成功事例ほど心強いヒントはありません。近年タイでは「ユズ専門ブランド」が誕生し、オンライン販売から23店舗まで成長、さらにASEAN市場進出を視野に入れるまでに拡大しました。日本由来の果物が現地でブランド化されたこの事例は、中小企業が海外展開を進めるうえで大きな示唆を与えてくれます。本記事ではタイの現地メディアから「Yuzu House」の成功ストーリーをもとに、日本ブランド果物輸出の可能性と、中小企業が実践できる市場開拓のポイントを解説します。

タイで“ユズ”がブランド化された背景

タイ市場で広がった経緯

ここ数年、タイでは「ユズ」という名前が一般消費者に浸透し、専門店や飲料ブランドが登場するまでになりました。Thairathの記事によると、創業者がユズの香りと味に惚れ込み、自ら輸入とブランド立ち上げに踏み切ったことがきっかけでした。最初はオンライン販売から始まりましたが、カフェ文化やドリンク市場との相性の良さから急速に広がり、現在ではタイ国内に複数店舗を展開するブランドへと成長しています。背景には、タイの若年層を中心に「爽やかな酸味」や「映えるドリンク」への需要が高まっていたことがあります。日本の果物がこうして現地消費者のライフスタイルに馴染むと、ブランドとしての成長スピードも加速しやすいのです。

日本由来の果物が受け入れられる理由

ユズがタイで受け入れられた大きな要因は、日本産への強い信頼感にあります。日本の果物は「高品質・安全・健康的」というイメージが定着しており、それが購買の後押しとなりました。加えて、ユズはレモンやライムよりも酸味が強く、独特の香りを持つため、差別化された魅力を提供できました。タイの暑い気候や健康志向の高まりも追い風となり、飲料やスイーツへの応用が進みました。私自身、タイでの商社経験から感じるのは「ただ高級品として輸出するだけでなく、現地の食文化や嗜好に合わせた形で提案すること」が成功のカギになるという点です。ユズの事例は、日本ブランド果物が市場に根付くための好例といえるでしょう。

「Yuzu House」の成功ストーリー

ここからはタイ市場でユズをブランド化した「Yuzu House」が、どのようにして成功を収めたのか、そのストーリーを具体的に見ていきましょう。

創業者のきっかけとブランド立ち上げ

タイでユズ専門店「Yuzu House」を立ち上げたのは、もともと輸入飲料のビジネスに携わっていた女性起業家パットサラー・タオサクン氏です。Thairathの記事によると、彼女は韓国から輸入されたユズジュースを初めて試飲した際、その独特の酸味と香りに強い感銘を受けたといいます。レモンの約3倍もの酸味を持ちながら、爽やかな香りが調和しており、他の柑橘類とは一線を画す特徴でした。そこから「日本発のユズ」という存在を知り、100%ナチュラルなユズ製品をタイに広めたいという想いが芽生えました。起業の出発点は「自分が感動した味を人々と共有したい」というシンプルな動機でしたが、それが結果的にブランド化につながったのです。私の経験上、海外展開においては創業者の想いとストーリー性が大きな武器になります。消費者は商品だけでなく「背景」に共感してファンになるからです。

最初のプロダクトと市場教育

「Yuzu House」が最初に市場に投入したのは、ユズの香りを活かしたドリンク「Yuzu Honey」でした。ユズの爽やかな香りと、蜂蜜の優しい甘さを組み合わせることで、タイ人が好む「爽やかで、甘酸っぱい」味覚を捉えました。

しかし、ユズがまだタイで馴染みのない存在だったため、顧客にその良さを伝える「市場教育」が不可欠でした。彼らは、単に商品を売るだけでなく、SNSやイベントを通じてユズの効能(ビタミンC、健康、香りによるリフレッシュ効果など)を積極的に発信しました。

これは、海外進出を検討する際に非常に重要な視点です。現地の消費者が知らない商材を扱う場合は、商品そのものの魅力だけでなく、「この商品はどんなメリットがあるのか?」を丁寧に伝えるコミュニケーション戦略が欠かせません。この「市場教育」に成功したからこそ、「Yuzu House」は単なるドリンクブランドではなく、「ユズ」という素材そのものをブランド化できたと言えるでしょう。

オンライン販売から23店舗展開へ

「Yuzu House」は最初にオンライン販売から始まりました。これは投資リスクを抑えつつ市場の反応を確かめる手法であり、中小企業にとって現実的なアプローチです。徐々に認知度を高めた後、ブランドは実店舗展開に踏み切り、現在ではタイ国内で23店舗を展開しています。そのうち18店舗は直営、4店舗はフランチャイズという形で拡大しており、店舗数の増加がユズを「日常の選択肢」として定着させました。さらにCheers Selectionとのコラボレーションでは日本・福島県産のユズを使ったドリンクを販売し、「日本直輸入」の付加価値を訴求しています。これにより「健康・品質・本物感」というブランドイメージを強化することに成功しました。私の商社時代の経験でも、現地販売チャネルを拡大する際には「現地化」と「本物感」のバランスが重要でした。現地で根付かせながら、日本産の信頼性を前面に出すことで競争力を維持できるのです。

このように、いきなり大規模な投資をするのではなく、まずはオンラインという形で小さくスタートすることは、資金力に限りがある中小企業にとって現実的な戦略です。現地でのマーケティング活動やECサイトの構築、パートナー選びなど、海外展開の具体的な進め方について、さらに詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。

成功要因は何か?

健康+香りという差別化ポイント

ユズがタイ市場で受け入れられた背景には、健康と香りという二つの要素が大きく影響しています。Thairathの記事によると創業者がユズの「強い酸味と独特の香り」に惹かれ、ブランド化に挑戦したことが原点でした。タイの消費者は健康志向が年々高まっており、ビタミンCが豊富で抗酸化作用を持つとされるユズは「体に良いフルーツ」として差別化に成功しました。また、爽やかな香りはドリンクやスイーツと非常に相性が良く、既存のレモンやライムとの差別化を強く打ち出せました。私の経験上、輸出商材が現地で根付くには「機能的価値」と「感覚的価値」を同時に満たすことが重要で、ユズはその両面で優位性を発揮したといえます。

BtoCとBtoBの両輪戦略

「Yuzu House」は一般消費者向けのBtoCビジネスだけでなく、飲食店や工場へのBtoB展開を同時に進めた点も成功の要因です。最初の商品であるユズドリンクはオンラインでの小売販売から始まりましたが、その後カフェやレストランに原料として提供され、ユズを使ったスイーツや料理が広がっていきました。結果的に消費者は「カフェで飲んだ味」を自宅でも楽しみたいと考え、リピート需要につながりました。中小企業が海外輸出を始める際も、この「BtoCとBtoBの両輪」を意識することで、ブランドの認知拡大と安定的な販路構築が可能になります。私もタイ市場の案件を支援する中で、現地の飲食業界とのつながりが輸出ビジネスの定着に欠かせないことを実感してきました。

日本産ユズを使った品質ストーリー

さらに「Yuzu House」は、福島県産のユズを使用することでブランド価値を高めました。日本産果物はタイで「高品質で安全」という強いイメージを持たれており、その信頼感が購入動機につながります。Thairathの記事でも日本の農園から仕入れたユズを使用していることが他ブランドとの差別化に直結していると紹介されています。中小企業にとっても「どの地域の果物か」「どのように育てられたか」といったストーリーを打ち出すことは、単なる輸出を超えてブランド戦略につながります。ブランド果物の海外戦略において、この「品質と産地の物語」をどう伝えるかが大事です。

ASEAN市場への拡張モデル

タイ国内での成功とフランチャイズ展開

「Yuzu House」は、オンライン販売から始まり、タイ国内での認知拡大を経て、実店舗を23店舗まで増やしました。そのうち18店舗は直営、4店舗はフランチャイズという形態で、持続的に拡大している点が注目されます。Thairathの記事によると、フランチャイズモデルを導入したことで地方都市にも出店が進み、首都圏に限らない幅広い顧客層を取り込むことに成功しました。私の経験でも、海外輸出を考える中小企業が現地に深く根差すには、販売チャネルの多様化が欠かせません。直営展開でブランドを確立しつつ、フランチャイズや現地パートナーの協力を得ることで、スピード感を持って市場を拡大できるのです。

カンボジアなど周辺国への進出

「Yuzu House」はタイ国内の成功を基盤に、カンボジアをはじめとするASEAN諸国への展開も視野に入れています。記事ではカンボジア市場において日本ブランドへの信頼が強く、富裕層を中心にユズが受け入れられやすいと紹介されています。東南アジアはASEAN経済共同体(AEC)の枠組みにより、関税や物流のハードルが下がり、越境展開が比較的容易になっているのが特徴です。日本の中小企業にとっても、まずはタイ市場で実績をつくり、その後周辺国へ広げる戦略は現実的かつ有効です。飲料・果物関連は「健康志向」「日本産ブランド」という二つの強みを活かせる分野といえるでしょう。
※記事は2024年になります。

中小企業が学ぶべき「ASEAN波及効果」

ユズ専門ブランドの動きから学べるのは、「一国での成功をASEAN全域に広げる波及効果」の重要性です。タイは購買力のある中間層を抱え、ASEAN内での情報発信力も大きいため、タイ市場での成功事例は周辺国に影響を与えやすいのです。私自身、輸出入支援を行う中で、タイでの成功が契機となりラオスやカンボジアに商機が広がった事例をいくつも見てきました。中小企業が海外輸出を始める際には、単にタイ市場を目指すだけでなく、その先にあるASEAN全体への展開を見据える視点が不可欠です。これは「フランチャイズ 海外展開 日本企業」にも応用可能な戦略であり、今後の成長を大きく左右するポイントになるでしょう。

日本ブランド果物への応用可能性

シャインマスカット・桃の事例化

ユズ専門ブランド「Yuzu House」がタイで成功した事例は、日本の他のブランド果物にも応用できます。シャインマスカットや桃などはすでに日本国内で高いブランド力を持っており、現地消費者にとっても「特別感のあるフルーツ」として受け入れられる素地があります。タイの富裕層は日本の果物ギフトを好む傾向が強く、既に高級スーパーや百貨店では限定的に流通しています。ただし、単なる輸入販売に留まらず「ユズのように現地の食文化に組み込む」ことで市場拡大が可能です。シャインマスカットを使用したデザート、桃を活かしたシーズナルメニューなど、日常的に楽しめる形にすることで裾野を広げられるのです。

「ギフト」から「日常の贅沢」へ転換するヒント

日本のブランド果物は「贈答品」としての認知が強い一方で、日常的な消費にはまだハードルがあります。ユズが成功した理由の一つは、ギフト用途だけでなく「気軽に買えるドリンクやデザート」として浸透させた点にあります。これは桃などにも応用でき、消費者が「ちょっと贅沢したいときに選ぶフルーツ」として位置づけられると、販売ボリュームは大きく広がります。私がタイで商社勤務していた経験からも、高級志向だけでは市場は限定的になりがちですが価格帯や提供形態を調整することで、より広い中間層に浸透させることが可能です。

カフェ文化・SNSとの親和性

タイではカフェ文化が根強く、SNS映えする商品は口コミによって瞬く間に拡散します。「Yuzu House」のユズドリンクが流行したのも、見た目の鮮やかさと写真映えの効果が大きな要因でした。日本ブランド果物も同様に、カフェメニューやスイーツに組み込むことで「写真を撮りたくなる体験」を提供できれば、自然に若年層へ浸透していきます。シャインマスカットや桃はビジュアル的な魅力が強く、SNSでの拡散力も期待できます。こうした戦略は、単なる果物販売から「体験型のブランド果物ビジネス」へと進化させるヒントになるでしょう。

中小企業が今から取り組むべきこと

価格帯・市場調査の重要性

海外輸出を成功させるためには、まず価格帯と市場調査が欠かせません。たとえばユズのように「高付加価値の健康果物」として位置づけられるか、それとも「日常消費型フルーツ」として普及させるかによって戦略は大きく変わります。タイ市場では、富裕層向けに高価格で販売する一方で、カフェやコンビニ向けにリーズナブルな派生商品を展開するケースもあります。私の経験からも、現地での競合調査や消費者の嗜好分析を行わずに輸出を始めると、価格が合わずに販売が伸びないことが多いのです。まずは「現地でいくらなら買ってもらえるのか」を把握することが第一歩になります。

小さく始める海外展開(EC・パートナー探し)

いきなり大規模な投資を行う必要はありません。「Yuzu House」がオンライン販売から始めたように、小さく試しながら市場の反応を見るのが賢明です。タイではShopeeやLazadaといったECモールが急成長しており、中小企業でも低コストで参入が可能です。また、現地の販売代理店や飲食店といったパートナーを見つけることで、リスクを抑えながら販路を広げられます。私自身、タイでの営業支援を行う中で「まずはEC+現地パートナー」で始め、半年から1年かけて育てていく企業が成功しているのを数多く見てきました。小さな一歩がやがて大きな成果につながるのです。

現地のライフスタイルに溶け込む商品設計

最後に重要なのは、現地消費者のライフスタイルに合わせた商品設計です。ユズがタイで受け入れられたのは、単なる果汁ではなく「カフェドリンク」「スイーツ」「料理のアクセント」として活用できたからです。日本ブランド果物も「そのまま食べる」だけでなく、飲料、スイーツ、ギフトなど多様な形で提供することで浸透しやすくなります。私の支援先でも、有田みかんをジュースやスイーツに加工して紹介したところ、現地の若者層に強い反応がありました。輸出する際は、商品の強みをどう現地の生活に落とし込むかを考えることが成功の鍵になります。

まとめ

ユズ専門ブランド「Yuzu House」の成功は、日本ブランド果物の海外輸出における理想的なモデルケースといえます。オンラインから始め、現地の嗜好に合わせた商品設計で市場を拡大し、ASEAN全域へ広げる戦略は、中小企業にとっても応用可能です。私自身、タイ在住18年・商社での輸出入実務経験を活かし、タイ市場開拓や輸出入支援、現地バイヤーとの商談アレンジ、通訳・翻訳まで一貫してサポートしています。これから海外輸出を検討されている中小企業の皆さまも、まずはお気軽にご相談ください。タイ市場での販路開拓やASEAN進出に向けた第一歩を一緒に形にしていきましょう。

👉 お問い合わせはこちら(Googleフォーム)

長谷川舞美|タイ貿易×海外販路×インバウンド戦略支援

タイ在住18年・大手総合商社出身。中小企業のタイ進出と訪日インバウンド支援を行うマーケター。

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