タイで化粧品を輸入・販売するには、タイ食品医薬品局(FDA)への登録が必須です。しかし、「輸入者登録は済ませたけれど、その後どうすればいいの?」「MSDSって何?」と戸惑う声も少なくありません。本記事では、タイFDA登録の具体的な流れと必要書類について、現地実務に精通したプロが5ステップでわかりやすく解説します。自社対応を検討中の方も、登録手続きに不安を感じている方も、ぜひ最後までご覧ください。
「輸入者登録はしたけれど…」次に何をすればいい?
輸入者登録後によくあるお悩み
タイでの化粧品ビジネスを始める第一歩として「輸入者登録」は重要なステップですが、それだけではまだ販売はできません。実際には「輸入者登録したものの、次に何をすればいいのかわからない」「どこに何を提出すればよいのか」といったご相談が非常に多く寄せられます。
とくに中小企業の場合は、初めての海外展開でタイ語や現地制度に不慣れなケースが多く、社内リソースだけでは情報収集や実務対応が難しいことも少なくありません。本記事では登録後に必要な5つのステップとそれぞれに求められる書類・対応を整理してご紹介します。
よくある質問:「MSDSってなに?」「何の書類が必要?」
輸入者登録が済んだ後、多くの企業が最初につまずくのが「MSDS(安全性データシート)」という書類です。製造元からもらうのか、自社で作るのか、タイ語で用意する必要があるのか、など疑問は尽きません。
成分表・原産地証明書・自由販売証明書(CFS)など、どの書類が必須で、どこに提出すべきかがわからず、作業が止まってしまうケースも多発しています。
これらの不明点を放置すると申請が進まず販売の遅れや、最悪の場合は登録却下につながるリスクもあります。次章ではタイFDA登録の流れをステップごとに整理しながら、必要な準備をわかりやすくご紹介していきます。
タイ化粧品FDA登録の全体フロー【5ステップで解説】
STEP1|製品のFDA該当分類を確認する
まず最初に行うべきは、登録予定の製品がタイFDAのどのカテゴリに該当するかを確認することです。化粧品といっても、その成分や用途によっては医薬品や医療機器、あるいは有害物質として分類される場合もあります。 ホワイトニングや抗菌効果をうたう製品は、単なる「一般化粧品」として扱えないことがあります。誤って分類すると申請自体が無効になったり、後でトラブルにつながったりするリスクも。
タイFDAが定める「化粧品の定義」と該当カテゴリを正確に理解してから、登録手続きを始めましょう。
STEP2|必要書類を揃える(MSDS、成分表など)
製品の分類を確認したら、次は必要書類の準備です。
タイFDAへの登録には、以下のような書類が求められます。
- MSDS(安全性データシート):原料の安全性を証明する基本資料
- 成分表(INCI名):国際的な化粧品成分名称で一覧化されたもの
- ラベル案:タイ語表示を含めた製品パッケージのデザイン草案
- CFS(自由販売証明書):原産国で販売されていることを証明する文書
これらの書類は一部、製造元やサプライヤーに依頼する必要があるため、早めの準備が大事です。タイ語での提出が求められる項目もあるため、翻訳の手配もあわせて検討しましょう。
STEP3|PIF(製品情報ファイル)を準備する
PIFとは「Product Information File」の略で、製品の安全性や品質に関する詳細情報をまとめたファイルです。 タイでは届出時点でのPIF提出は不要ですが、届出完了後、販売事業者としての保管義務があります。PIFには以下の5つの項目が含まれます。
- 製品説明書
- 製造方法の概要
- 原料情報と安全性データ
- 最終製品の試験結果
- 安全性評価報告書
販売開始後にFDAから抜き打ち監査を受けることもあるため、これらを整備しておくことが大事です。
STEP4|タイFDAのシステムでオンライン届出(タイ語対応)
タイFDAへの申請は、オンラインシステム(e-submission)を通じて行います。すべての操作は基本的にタイ語で進行し、企業登録・製品登録・書類のアップロード・申請料の支払いといった工程があります。 タイ国内に登記された法人(輸入者)でなければ申請ができないため、日本企業が単独で申請することはできません。 また、操作ミスや言語の壁で届出が完了せず、申請が滞るケースも多いため、実務に慣れた担当者か、現地パートナーとの連携が不可欠です。
STEP5|登録完了後の販売準備と書類の保管義務
オンライン届出が完了し、受理番号(Notification Number)が発行されれば、その製品は正式にタイ国内で販売可能となります。 ただし、登録後もラベル表示や広告表現の管理、PIFの保管など、遵守すべき義務は続きます。 タイFDAは製品ラベルの誤表示や成分記載ミスに厳しく、違反があれば販売停止や罰則の対象となる場合もあります。 継続的な法令確認と現地実務のサポート体制を整えておくことが、安定したビジネス展開の鍵となります。
FDA登録に必要な書類まとめ(初めての方向け)
MSDS(安全性データシート):取得方法と注意点
MSDS(Material Safety Data Sheet)は、製品に使用されている各原料の安全性を証明する書類です。タイFDAではすべての原料に対してMSDSの提出が求められます。
取得方法としては製造元や原材料のサプライヤーから直接提供を受けるのが一般的です。日本語または英語で発行されたMSDSをもとに、必要に応じてタイ語訳を添付するケースもあります。
注意すべきポイントは以下のとおりです。
- 成分名称がINCI名で記載されているか
- 発行日が新しすぎないか(1年以内が望ましい)
- GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に準拠しているか
MSDSの不備があると、申請自体が受理されないこともあるため、事前の確認が重要です。
成分表(INCI名)とラベル案の提出
成分表は、製品に使用されている全成分を国際的に認められたINCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)名で一覧にしたものです。タイFDAでは、含有率順に並べられたINCI名での記載が必須です。
ま登録時にはタイ語表記を含めた「ラベル案」の提出も必要となります。以下の情報が正しく表示されていることが求められます。
- 製品名(英語・タイ語)
- 成分一覧(INCI名)
- 製造元および輸入者情報
- 使用方法・注意事項
- 容量・ロット番号・製造日など
ラベルの誤表記は販売後の摘発リスクにもつながるため、タイFDAの表示ルールに準拠した内容で作成しましょう。
原産地証明書・自由販売証明書(CFS)
輸入化粧品の登録には、以下の2つの証明書が必要になる場合があります。
■ 原産地証明書(Certificate of Origin)
製品がどの国で生産されたかを証明する文書で、商工会議所など公的機関が発行します。関税申告でも使用されるため、正確な情報が記載されていることが重要です。
■ 自由販売証明書(CFS:Certificate of Free Sale)
「その国で合法的に販売されていること」を証明する書類です。日本の場合は厚生労働省や地方自治体、商工会議所などから取得可能です。発行には数週間かかるケースもあるため、早めの申請をおすすめします。
PIFの中身と保存義務:何をどこまで準備する?
PIF(Product Information File)は、製品の安全性や品質を保証する裏付け資料です。登録時の提出義務はありませんが、販売事業者は作成・保管が義務付けられています。
PIFに含まれる主な内容は以下のとおりです。
- 製品説明と処方
- 製造工程と衛生管理の概要
- 各成分のMSDSや安全性評価資料
- 微生物検査や安定性試験の結果
- 製品の安全性評価書
これらの資料を製品ごとに一元化し、販売開始後も最低3年間は保管しておく必要があります。タイ語化の必要はありませんが、FDAの立ち入り監査に備え、いつでも提示できるよう整理しておきましょう。
化粧品の成分規制について(禁止品・制限品)
タイFDAでは、化粧品に使用できない成分(禁止物質)や、使用量・使用方法に制限がある成分(制限物質)が定められています。これに違反すると、登録が受理されないだけでなく、罰則や回収命令が下されるリスクもあります。
成分規制に関する最新情報は、タイFDAの公式ページにて確認可能です。以下のリンクから、成分リスト(タイ語)を閲覧できます。
【参考リンク】
・化粧品に使用が禁止されている成分一覧(タイ語)
成分に不安がある場合は、登録前に専門家によるチェックを受けることをおすすめします。ホワイトニング系・ハーブ系製品は規制対象となる成分が多いため、注意が必要です。
よくあるトラブルと対応策【初動で失敗しないために】
成分規制違反・カテゴリ誤認に注意
タイFDAでは使用が禁止されている成分や、使用量・使用方法に制限のある成分が詳細に定められています。とくにホワイトニングやハーブ系製品では、含有成分が規制対象となることが多く、事前のチェックが不可欠です。また、製品のカテゴリ(化粧品、医薬部外品、医薬品など)を誤認したまま届出を進めてしまうと、登録拒否や差し戻しにつながることもあります。
トラブル回避のためには以下の対応が効果的です。
- 成分はINCI名で一覧化し、FDA公開リストと照合する
- 不明な成分やハーブ類は、事前に専門家に相談する
- 製品の効能表示が過剰でないかも確認する(医薬品的表現に注意)
タイ語対応ができずに届出で止まるケース
タイFDAの化粧品届出は、すべてオンライン上のタイ語システムで行われます。製品情報、成分、使用方法、警告表示など、すべてをタイ語で正確に入力する必要があるため、翻訳ミスや表現の誤解釈が原因で審査がストップしてしまうケースも多く見られます。
こうした事態を防ぐには、次のような対策が有効です。
- 専門用語に対応したタイ語翻訳者を活用する
- 過去の登録事例に基づく表現を参考にする
- 登録システムの操作に慣れた担当者に依頼する
届出作業を円滑に進めるには、タイ語の実務知識が不可欠です。
書類不備で差し戻されるリスク
MSDSや成分表の記載ミス、INCI名の抜け漏れ、証明書の有効期限切れなど、書類の不備が原因で届出が受理されないケースもよくあります。特にMSDSは、GHS基準に準拠していなかったり、必要な項目が不足していたりすると、差し戻し対象になります。
事前のセルフチェックとして、以下のポイントを確認しましょう。
- MSDSはすべての原料分を用意しているか
- 成分表は含有量順・INCI名で整っているか
- 原産地証明書や自由販売証明書の発行元・記載内容は正確か
トラブルを未然に防ぐには、提出前に第三者の目で確認することが重要です。実務経験者のサポートを受けることで書類不備による時間的ロスを最小限に抑えることができます。
自社で対応すべきか?専門家に任せるべきか?
判断基準:タイ語対応・法令解釈・実務経験の有無
化粧品のタイFDA登録を自社で進めるか、専門家に依頼するかを判断する際は、以下のポイントを基準にすると良いでしょう。
<チェックポイント>
- 登録システム(e-submission)をタイ語で操作できるか
- 成分規制やカテゴリ分類などの法令を自社で解釈・対応できるか
- タイ語のMSDSや成分表の作成・修正に対応できるか
- 書類の不備や差し戻しに対して柔軟に対応できる社内リソースがあるか
これらすべてに対応可能な社内体制がある場合は、自社対応も不可能ではありません。しかし、タイFDAの登録実務は非常に細かく、少しの表記ミスで届出が差し戻されることもあります。初めての登録であれば、経験者による伴走やチェックを受けることで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
登録だけでなく、販売後のトラブル対応も重要です
FDA登録はゴールではなく、あくまでスタートです。タイでは登録完了後も、下記のような場面でトラブルが起こる可能性があります。
- 店頭ラベル表示に不備があり、摘発を受ける
- 成分変更後に再登録が必要と知らず、無届け販売になる
- 規制強化により、過去に登録済みの成分が禁止対象になる
- 登録業者が途中で廃業し、連絡が取れなくなる
こうした販売後のフォロー体制まで考慮することが重要です。特に輸入元責任者として登録する現地パートナーが対応できない場合、最終的に日本側が全責任を問われるケースもあります。
そのため、登録時から「販売後まで相談できる専門家」と連携しておくことが、長期的なリスク回避につながります。登録のスムーズさだけでなく、その後の安定した事業運営までを視野に入れて判断するのがおすすめです。
まとめ
タイでの化粧品FDA登録は、一見すると「オンライン申請だけ」と思われがちですが、実際には製品分類、書類整備、成分チェック、タイ語対応と、専門的な工程が多く存在します。初めての企業様にとっては、不明点や想定外の差し戻しが連続し、スケジュールに大きな遅延が出てしまうことも少なくありません。タイで化粧品を販売するためには「輸入者登録をしたら終わり」ではなく、製品ごとのFDA届出と、それに付随する書類整備が必須です。MSDSや成分表、PIFなど、慣れていないと聞き慣れない用語も多く、不備があれば届出が通らず販売に支障が出ます。
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